2020 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding the dynamical instability of financial markets using network analysis
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19H01506
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小林 照義 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (10387607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
翁長 朝功 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (90823922)
川本 達郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (10791444)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | テンポラル・ネットワーク / スケーリング / 資産価格 |
Outline of Annual Research Achievements |
金融システムにおける銀行間取引ネットワークと、人間同士の交流関係である社会ネットワークとの間にはその動的性質に多くの類似性があることはこれまでの研究でわかっていた。本年度は、その両者のネットワークに共通してみられるスケーリング則を新たに発見し、それを数理モデルで説明することに成功した。 具体的には、各時点のネットワークのスナップショットにおけるノード数(N)とエッジ数(M)を観察したときNとMの間には非線形の関係性があるが、接触ネットワークなどではMが加速度的に上昇する現象が見られる。つまりノード数の上昇につれてネットワークが急速に(指数関数的速度で)密になる場合がある。一方で銀行間ネットワークなどでは対数軸上では直線になるため、そこまでの密度上昇は見られない。これを踏まえると、両者の間では本質的にネットワーク形成の動的メカニズムに違いがあることが示唆される。 そこで筆者らは動的なフィットネス・モデルを用いて、両者の違いが、ネットワークのダイナミクスの源泉の違いにあることを突きとめた。具体的には、動的性質がその場の人口変化に起因する場合と、人々の活動量に起因する場合の違いとして説明されることを示した。 さらに、その二つのメカニズムは1日という短いタイムスパンで見ても切り替わっていることをマルコフ・レジーム・スイッチングモデルを用いて検出し、(観測できない)潜在的人口や活動量といったパラメータを実データから推定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
銀行間市場の動的ネットワークに関しては「研究実績の概要」にも記載したとおり、密度の増加に関して予想外の発見をし、2本の査読付き論文として公刊したため予定以上の成果を上げることができたと言える。一方で、金融市場におけるネットワークを通じた投げ売りモデルの方は現在も進行中である。ただしすでに研究は最終段階で、大方の目処はついているため2021年度には論文として書き上げる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
継続課題としてネットワーク上の破綻モデルを用いた投げ売りの数理モデルを完成させ、論文を仕上げていく。共同研究者が投資信託のポートフォリオデータを新たに作成したため、実際のデータの上で今回開発したモデルのシミュレーションを行なうことが可能になった。
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Research Products
(7 results)