2019 Fiscal Year Annual Research Report
Corporate Governance and Experience: New Database Construction and Empirical Research
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19H01507
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内田 交謹 九州大学, 経済学研究院, 教授 (80305820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森保 洋 長崎大学, 経済学部, 教授 (10304924)
篠崎 伸也 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (10636898)
葉 聰明 九州大学, 経済学研究院, 教授 (20404858)
小野 慎一郎 大分大学, 経済学部, 准教授 (20633762)
閔 廷媛 上智大学, 経済学部, 准教授 (30632872)
山田 和郎 立命館大学, 経営学部, 准教授 (90633404)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コーポレートガバナンス / 取締役 / 機関株主 / 取引先 / 経験 / 自社株買い / CSR |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①アメリカ企業を対象に取締役の経験(業績、設備投資、資本構成、配当・自社株買い、M&A、CSR等)の変数作成およびパイロット分析、②日本企業の経験変数作成の基礎となる自社株買い・配当、株主データベースの構築、③国際データを用いた機関株主経験と株主総会投票結果の関係についての研究、④中国企業経営者の外国経験と関係当事者間取引、利益マネジメントの関係の分析を行った。 ①では膨大な時間をかけて、各企業の取締役について、それぞれ過去に役員を経験した企業の財務データ等の平均値を計算することで当該役員の経験変数とし、その企業平均値を計算した。また新任取締役選任時を対象に、新任取締役の経験変数が経営者および既存の取締役の経験と関係しているか、株価反応に影響しているかのパイロット分析を行った。 ②では日本企業の機関株主・取引先の経験変数を作成する準備として、全上場企業の自社株買いアナウンスメントと株価反応データ、自社株買いの予定・実施額、配当額、機関株主データの構築が終了した。またこれらのデータを使った経験変数作成のプログラミングを進めている。③では、日本・イギリス・フランスの3カ国を対象に、機関株主の国籍・ポートフォリオ特性を基に経験を変数化し、株主総会における投票結果との関係を分析した。この研究結果については、国際会議3件で報告した。④では、膨大な時間をかけて中国企業の海外での学修・勤務経験のデータを構築し、関係当事者間取引との間の関係を分析した。 また、データ構築の過程で得たさまざまな知見や作成したデータの一部を用いて付随的な研究を行っており、中国国有企業や日本企業の新規株式公開(IPO)、取引先による流動性供給、会計情報を用いた資本コスト推計などについて、国内外の学術誌に論文を掲載した。またサーベイ等で得た知見をもとに書籍の執筆も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカ企業の取締役の経験に関する世界にも類を見ない膨大なデータベースの構築に成功した。実証分析も既に進めており、既存取締役と新任取締役の経験の関係や新任取締役アナウンスメント時の株価反応などについて統計的に有意な結果が得られており、2020年度中のワーキングペーパー執筆を見込んでいる。今後このデータとノウハウを用いて、取締役会多様性に関する新たな変数作成や機関株主の新しい特性変数を構築できると期待できる。 日本企業について、自社株買いのアナウンスメント及び株価反応のデータ、機関株主構成データが構築できたため、アメリカの分析で得たノウハウを用いて、2020年度中に機関株主経験変数を構築し、分析を実施できると見込んでいる。国際データを用いた機関株主の経験と株主総会投票結果の分析については、国際会議3件で多くの有益なコメントを得ることができ、分析を追加したうえで2020年度中に論文を改訂・投稿できる見込みとなっている。中国企業を対象とした経営者の海外経験についても、膨大な時間をかけて貴重なデータベースの構築に成功し、さらに主要な分析を一通り終えることができた。2020年度中に論文を投稿できる見込みである。 最後に、作成したデータを用いた付随的な分析で国際学術誌5件の論文掲載や国際会議報告10件、書籍(分担執筆)2件など、一定の研究成果を出せた点も、本研究プロジェクトがおおむね順調に進展していると評価できる理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者である内田はすべてのプロジェクトに関わっており、各プロジェクトに必要な作業を分割し、作業工程表を作成する。そのうえで分担者による作業が必要な部分を特定し、可能な限り明確かつ具体的な作業指示を出すことで、各プロジェクトが中断することなく、スピーディーに進行するよう心がける。これまでもそのような体制で研究を進めてきたが、分担者への指示にやや時間がかかることもあったため、研究代表者自身がこれらの作業をスピーディーに行えるようにするため、リサーチアシスタントや大学院生による研究補助等をより積極的に活用する。 研究分担者への指示に誤解が生じないようにするとともに、アイデアを生む機会を作るため、定期的に各研究分担者と遠隔会議を用いてミーティングを行う。これらのミーティングにおいては、他のプロジェクトの進捗状況も説明し、プロジェクト間の情報共有を図るとともに、研究改善のためのコメントを得る機会とする。海外の共同研究者とも同様に定期的に遠隔会議ミーティングを持ち、研究の改善を図る。
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