2020 Fiscal Year Annual Research Report
ファイナンス理論の臨床性評価における深層学習の活用
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19H01508
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
北村 能寛 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90409566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯間 等 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 准教授 (70273547)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 指値注文 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では指値注文が為替レートの価格発見に貢献することを機械学習の手法の一部であるLSTM(Long short-term memory)を用いて実証的に示した。すなわち為替レートの価格発見を考えるとき、取引(流動性需要要因)のみでなく、流動性供給サイド(指値注文)が重要であることを示した。具体的に、効率的為替レートの変動は、最良値改善指値注文ならびに最良値悪化キャンセルという、最良値周辺の指値注文により大部分が説明されることが判明した。このことは、取引にくらべ指値注文の頻度が大きい(それゆえ指値注文の変動・分散が大きい)ということを考慮しても、頑健である。また、研究対象としたインターバンク為替市場(EBS)では、成行注文に対応するのがIOC(Immediate Or Cancel)であり、このことが指値注文の貢献度を大きくすると推測される。すなわち、EBS市場で即座に成立する取引を試みるならば、最良値もしくはそれを更新する価格での指値、もしくは価格を指定してそれが即座に成立しなければキャンセルであるIOCのいずれかである。このことを踏まえ最良値改善指値注文が取引に関連したものとしても、最良値悪化キャンセルの貢献は流動性供給サイドの要因であり、依然として指値注文の重要性はのこる。従来の研究では、取引(成行注文)が株式、為替レートの価格発見に重要であり、指値注文はそれに貢献しないとされてきたが、本研究はこの従来の学説とは異なる立場をとるものとして重要である。尚、当該年度はボラテリィティ予測における指値注文板情報の利用可能性に関する研究も始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で示した研究成果を論文としてまとめ上げ、現在国際専門誌に投稿・審査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」で示したように、指値注文が価格発見に貢献するという実証的事実は、取引情報のみで計算される従来のPIN(Probability of Informed Trading)、VPIN(Volume-Synchronized Probability of Informed Trading)指標では、市場の大幅な価格変動をとらえるものとして不十分なことを示唆するも のである。この研究成果を受けて、Flash crash等の突然かつ大幅な価格変動の予測に、指値注文の動学的変化を応用することを今後試みる。これに関連して、取 引情報に加え指値注文をもinputとした深層学習モデルLSTM(Long short-term memory)の為替レート予測力評価を主なったが、従来のモデル、取引情報のみを inputとしてLSTMを上回る予測力が判明している。
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Research Products
(4 results)