2020 Fiscal Year Annual Research Report
A Statistical Study of Indian Ocean Trade: Towards a Reappraisal of Regional Trade in Modern World History
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19H01515
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
杉原 薫 総合地球環境学研究所, 研究部, 特任教授 (60117950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 雄志 関西大学, 経済学部, 教授 (10412420)
鈴木 英明 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 准教授 (80626317)
坪田 建明 東洋大学, 国際学部, 准教授 (50546728)
小林 篤史 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 助教 (40750435)
小林 和夫 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (00823189)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インド洋交易史 / グローバル・ヒストリー / 貿易統計 / 経済発展径路 / 植民地化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に続き、3回の研究会を開催した。主なプログラムは次のとおり。第1回(6月29日)杉原「アデンから見た遠隔地貿易、インド洋交易、北東アフリカ・アラビア半島交易」、コメント:峯陽一(同志社大学)、小林篤史「インド洋・南シナ海交易圏の穀物貿易」コメント: 神田さやこ(慶応義塾大学)、坪田建明「アフリカの非主要交易ネットワークの分析」コメント:小林和夫。第2回(10月30日:オンライン) Hideaki Suzuki, “Nosy Be became a French Protectorate” Discussion led by Gareth Austin (Cambridge), Michihiro Ogawa (Kanazawa University) “Continuity and Change in Socio-Economic Systems from the Pre-Colonial to the Colonial period in Western India” Discussion led by Tirthankar Roy (LSE) . 第3回(2021年3月15日)佐藤盟信 “The Structure and Expansion of East Africa's Trading Network, c.1890-1936 (Zanzibar, Kenya and Uganda, and Tanganyika)”, 杉原“Aden in the Indian Ocean Trade, c.1880-1938: Cotton Textiles, Local Food and Exports to the West” コメント:阿部武司(国士舘大学)。 杉原は京都大学東南アジア地域研究研究所の研究会でも報告した(12月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に予定していた国際ワークショップは、コロナ禍で開催できなかったため、オンラインの国際セミナーを開き、予算の一部を2020年度に繰り越した。2020年度は、それを利用してリサーチアシスタントを雇用し、主にアデンに関する研究に時間とエネルギーを投入した。 主要なファインディングは次のとおり。まず、19世紀末から1930年代末までのアデンの貿易構造を地域別、商品別に分析し、インド洋交易、北東アフリカ交易、アラビア半島交易の3つの地域交易の主要なパターンを分析した。その結果、(1)綿製品の英領インド(のちに日本)からの輸入とアデン経由での北東アフリカ、アラビア半島への再輸出、(2)米、ジョワール、小麦、豆類などの英領インドからの輸入を含む、しかし北東アフリカ、アラビア半島産のものも含む、多面的な地域交易、(3)北東アフリカ、アラビア半島のいくつかのコーヒー産地からの輸入とそのヨーロッパ、アメリカへの再輸出といった三つの貿易環節の存在が確認できた。 また、北東アフリカ、アラビア半島の諸地域の貿易構造についてもイギリス議会文書のレベルでの分析を進めた。その結果、アデンを経由した貿易以外にも、ソマリランド、エチオピア、紅海沿岸諸港などのハブ機能がいくつか浮かび上がった。 さらに、こうした分析を踏まえてインド洋交易圏を俯瞰すると、(1)強い後背地を持つ英領インドの主要港(鉄道、道路、沿岸交易をつうじてローカルな交易を誘発)、(2)シンガポール、香港のような、近隣の国、地域とのつながりによって地域交易のハブと形成され、それを背景に遠隔地貿易の中継港として機能したもの、(3)スエズ、コロンボなどの遠隔地貿易に特化した中継港、といった類型化が考えられる。東アフリカ、北東アフリカ、アラビア半島の中継港は、交易の規模では小さいが、同様の類型化が可能ではないかと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の2021年度は、次の3つの課題を設定する。 第一に、インド洋交易圏および東アジアの26の国・地域の貿易構造の変遷を推計する作業を完成する。2020年度は、この作業のカバレッジを19世紀後半に引き延ばす作業は行わず、初年度に行った4つの年 (1910年、1928年、1938年、1950年)のデータの改善に集中した。その結果、とくに1928年以降の地域交易比率は大幅に上昇した。本年度は、少なくとも1900年について、概要を把握し、資料の入手可能性を考慮しつつ、19世紀後半の趨勢を探りたい。 第二に、インド洋交易圏内のローカルな交易圏の構造と趨勢を、中継港の役割を中心に確定する。シンガポール、カルカッタ、マドラス、ボンベイ、アデン、ザンジバルなどを後背地との関係で類型化するとともに、セイロン、スエズなど、遠隔地貿易に特化した中継港との対比を行う。とくに、アデン及びマラヤを中心 とするローカルなネットワークについての実証研究を深め、東アフリカの研究の進展も踏まえて、成果の刊行への見通しを立てたい。 第三に、分担者、協力者との連携を密にし、最終成果の刊行を見据えたセミナーを開催する。2021年度も、そのうちの一回を英語で行って、国際発信への目途をつけたい。
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Research Products
(24 results)