2020 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な交通についての研究:制度構築,公民の役割分担を中心に
Project/Area Number |
19H01538
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
正司 健一 神戸大学, 経営学研究科, 名誉教授 (70127372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 文俊 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (60263365)
三古 展弘 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (00403220)
水谷 淳 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (60388387)
酒井 裕規 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (20612336)
中村 絵理 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (00611071)
宋 娟貞 神戸大学, 経営学研究科, 経営学研究科研究員 (70803203)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Sustainable Transport / 交通政策 / 鉄道事業 / 上下分離 / 高速鉄道 / LCC / 交通行動 / 交通論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトは,持続可能な交通を実現するための制度構築及びその運営について分析を進めることで,同分野の研究発展に資するとともに実践的課題解決へつなげることをめざしている。2020年度の具体的成果について,海外ジャーナルに採択されたものを中心に示す。まず,わが国のJR貨物とJR旅客会社間の線路使用料におけるアボイダブル・コスト・ルールについて,JR旅客会社が負担している線路維持費用を試算したところ,現在JR貨物が支払う線路使用料の3倍程度になり,JR旅客会社には自社の線路を走行する貨物列車を削減するインセンティブを持つ可能性があることを明らかにしたものがある。次に鉄道事業におけるインフラ維持部門と車両運行部門の間の調整問題について,日本の鉄道事業3社を対象にケーススタディを行い,調整プロセスでインフォーマルなコミュニケーションが果たす役割が大きいこと,このようなコミュニケーションを可能にする組織設計は垂直統合組織でしか導入できず,とくに輸送密度が高く部門間調整が重要となる場合には垂直統合組織が望ましいといえることを明らかにした。さらに,既存事業者である大手FSC(Full Service Carrier)の運賃水準に与えた影響は,LCC(Low Cost Carrier)よりも新幹線の方が大きく,その理由の一つは新幹線の大きな輸送力にあると考えられることを明らかにした研究,鉄道事業における上下分離が費用に与える影響について数理モデルを用いて解明した研究,傾斜地におけるアクセス交通の手段選択行動を,RPデータおよびSPデータを用いて分析した研究も採択された。これら以外にも,研究計画に基づき構成員による多様な視座からの研究を推進し,それぞれ一定の成果を得,研究発表欄に示しているようにその一部を論文や学会において発表し多くの有益なコメントを得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究プロジェクトの中間年度として,当初計画していた課題に関する研究がおおむね順調に進んでいることは,10本の論文(うち6本が海外ジャーナルに採択,ディスカッションペーパー1本を含む)を公表し,2本の学会報告をしたことからも明らかである(研究発表欄を参照のこと)。2020年3月21日に海外から3名の本分野の著名研究者を招聘して開催予定だった国際会議が中止となったのに続いて,2021年9月,東アジアでは初となる神戸での開催が決定していた(2021年運営委員会のchairは三古が務め,研究代表者,他の分担者も運営委員会メンバー)International Conference on Competition and Ownership in Land Passenger Transport(略称:Thredbo17)も,2022年9月に延期となるなど,新型コロナウイルス感染症のさらなる広がりを受けて対面での密な国際的意見交換が困難になってきていることの影響は受けているが,その代わりとして昨年度末から開始した公的ネットワークサービスに関するデータベース構築作業も順調に進んでいるなど,これまでメンバーが連携をとりながら行ってきた研究を,研究計画をもとにさらに推し進めており,十分に所期の目的を達成することが可能になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画を踏まえ,新型コロナウイルス感染症拡大の影響に留意しながら,これまでの研究成果をベースに,引き続き便宜的に3班に分かれて研究を進めた後,これらの成果をとりまとめる。まず企業班は,国際的にも注目されているわが国私鉄のビジネスモデルを引き続き分析し,その維持可能性について検討する。次に制度班は,これまで構築に取り組んできた,参入退出規制撤廃や構造分離といった各種政策の評価モデルをいくつかの分野に適用して政策の有効性の検討を行う。社会班では引き続き,交通政策や供給構造の変化が事業者ならびに交通者にどのように影響するかを分析するとともに選択行動モデルの改善をめざす。本研究で課題とする制度構築・運営は,政策的要素を持つために,文書化された情報だけでは不十分なことから,国内外の多様な分野の研究者,技術者,行政担当者との意見交換を国際会議等通じて積極的に行う予定であったが,新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて限定的にしか行えない。そこで初年度末より開始した公的ネットワーク産業に関するデータベースの構築作業に引き続き注力することとし,分析に活用する。 これらの研究成果を,国際会議,学会等で発表するとともに,論文を執筆し,海外ジャーナルをはじめとした各種媒体に公表する。あわせて海外の本分野の中心的研究者から直接コメントを受け,討論する機会をもつ予定である。最後に本プロジェクト3年間の研究成果をとりまとめるとともに,今後の研究進展へ向けた研究課題を導出する。なお,2022年9月にThredbo17の開催が延期(引き続き三古教授が運営委員会のchair)されたが,研究期間終了後もその準備に務めるとともに,われわれの研究成果をさらに発展させ,会議の成功に貢献する。このように期間終了後も継続して鋭意,本研究課題に取り組み続ける。
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Research Products
(12 results)