2019 Fiscal Year Annual Research Report
感覚マーケティングに対する企業視点と消費者視点からの包括的検討
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19H01541
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
石井 裕明 成蹊大学, 経済学部, 准教授 (50548716)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 周造 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 名誉教授 (30060015)
守口 剛 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (70298066)
恩藏 直人 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (70194652)
朴 宰佑 武蔵大学, 経済学部, 教授 (50401675)
平木 いくみ 東京国際大学, 商学部, 教授 (60367026)
岩下 仁 九州大学, 経済学研究院, 講師 (30608732)
外川 拓 千葉商科大学, 商経学部, 准教授 (10636848)
金子 充 京都女子大学, 現代社会学部, 助教 (50732476)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 感覚マーケティング / 身体化認知 / クロス・モダル / 処理流暢性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マーケティング研究や消費者行動研究における感覚マーケティングへの注目の高まりを背景に、消費者行動への影響を包括的に把握し、実務への応用性の向上を図るべく、議論を進めている。2019年度は、主に以下の点について、研究を進めた。 第一に、消費者行動への影響メカニズムを詳細に検討するための文献レビューによる先行研究の整理である。処理流暢性、身体化認知、覚醒水準など、感覚マーケティングに対する消費者反応を説明しうるいくつかの理論に注目し、研究メンバーで分担して整理した。これらの整理を研究会で共有したうえで、研究メンバー間で議論し、2020年度以降に検討を進める仮説を導出した。また、成果の一部を当年度に出版した書籍に収録した。 第二に、複数感覚への影響に注目した議論の進展である。2019年度は、特に、視覚と触覚との結びつきに注目した。視覚的刺激が触覚に関わる概念を想起させる場合の消費者反応を把握することに加えて、触覚的刺激と視覚的刺激が想起させる概念が一致しない場合に評価が高まる消費者の特性を明らかにした。一部の成果を海外学会で報告しただけでなく、関連した研究知見を海外論文誌で発表した。 第三に、実際の消費者行動の把握である。近年の感覚マーケティング研究においては、実験室において感覚刺激に対する評価を質問紙への回答によって測定する手法が多く用いられている。本研究では、小売企業の協力により得られた実際の消費者行動の分析などを行い、成果の一部を海外学会で報告した。こうした分析結果を広く発信することで、実務への応用可能性を強く主張することができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部の予定が変わったものの、全体としては概ね順調に推移している。特に、消費者向けの調査については、当初計画以上の進展が得られている。当初計画では、2019年度の後期から仮説の導出や調査を進める予定であったが、研究の準備段階で多くの議論を重ねられたこともあり、2019年度の前半から仮説の導出や調査を実施することができた。その結果、当初の想定以上に学会発表等による研究成果の社会への発信を進めることができたと考えている。 一方で、実務家を対象とした検討については、当初、想定していたほどの知見を導出することができなかった。ただし、研究期間前の準備段階から複数のインタビュー調査を実施し、実務面における位置づけの整理を進めているだけでなく、関連する概念の文献レビューも順調に進んでいることから、一定程度、知見の蓄積は進んでいると考えている。2020年度以降、文献レビューの範囲を広げたり、小売企業の経営幹部を対象とした追加的なインタビュー調査を実施することで、着実な研究進展を図りたい。 なお、当初は、海外研究者を招聘した研究会等を予定していたが、想定以上に海外学会での発表が採択されたことに伴い、研究メンバーが海外学会に参加し、関連研究者との議論を深めることを重視した。今後の国際的な共同研究の実施に向け、有益な議論ができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後においては、2019年度までに得られた研究知見の深化と応用を目指していく。 第一の方向性は、複数感覚に注目した議論の進展である。2019年度に行った先行研究の整理等から、複数感覚がもたらす影響の理論的背景に関する知見を深めることができている。本研究では、先行研究の中でも、相反した結論を得ている議論に注目し、これらの調整変数などを明らかにすることで、新たな知見を導いていく予定である。 第二の方向性は、実務家における感覚マーケティングに対する意識や志向性についての再検討である。これまで関連概念の先行研究レビューや実務家を対象とした定性調査を進めながら知見を蓄積してきている。2020年度においては、定量的な調査に向けた準備を進めたいと考えている。 ただし、昨今の社会情勢に鑑みると、申請時の研究計画で想定していた調査の実施が難しい可能性がある。当初は、学生を対象としたアンケート調査やアイ・トラッキングを用いた調査を予定していたが、学生を特定の会場に集める形での調査の実施可否については慎重に検討すべきと考えられる。もし学生を対象とした調査や実験の実施が難しい場合には、インターネット調査などの代替的な手段への切り替えを検討するなどして、着実な研究進展を図っていく予定である。実務家を対象とした郵送調査については、実施自体は可能であると考えられるものの、昨今の社会情勢の中で適切な回答を得られるか、という点において課題があると考えられる。これらについても、オンライン会議ツールを活用したインタビュー調査に切り替えるなどして、着実な研究進展を図りたいと考えている。
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Research Products
(18 results)