2019 Fiscal Year Annual Research Report
クラウド・ソーシングが製品デザイン要素を通じて、新製品パフォーマンスに及ぼす影響
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19H01545
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
恩藏 直人 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (70194652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩下 仁 九州大学, 経済学研究院, 講師 (30608732)
大平 進 千葉商科大学, 商経学部, 講師 (30709001)
坂野 友昭 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (40139506)
石田 大典 日本大学, 商学部, 准教授 (80507872)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 製品開発 / 製品デザイン / クラウド・ソーシング |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、クラウド・ソーシング(以下CSと表記)の実態を把握するため、CSに関するビジネスを手掛けている国内外の企業への取材を行なった。1社目は、専門スキル(翻訳やデザイン等)の提供者と、それを求める企業や人とをマッチングさせるクラウドワークスである。2社目は、クラウド・ファンディング(以下CFと表記)を活用し資金調達を求める者と、支援者とを結びつけるMakuakeである。 プラットフォーム提供企業に取材を行なった後、CFを実際に導入した企業にも取材を実施した。キングジムでは、CFを活用し、TRENE(2017年)、カクミル(2018年)、Egg(2019年)という新製品を市場導入している。 国外でも、実態把握の為の取材を実施した。株式会社IHIの米国現地法人への取材からは、オープン・イノベーション活動の一環としてベンチャーキャピタリストと連携することで、新しいビジネス・シーズの獲得という副次的効果を得ていることを明らかにした。 シリコンバレーでは、B8taという家電や家庭用品の体験ショップにも訪問した。このショップは、スタートアップ企業とパートナーシップを結ぶことで、スタートアップ企業の新奇性の高い製品を訪問者に触れてもらう場となっていた。自動翻訳機「ポケトーク」は、当該ショップから生まれている。更に、クラウド・サービスで世界をリードするGoogle本社にも訪問した。なお、米国調査の際には、海外連携研究者であるKenneth教授と打ち合わせを行い、次年度に向けた定量調査について議論を行なっている。 以上のように、本年度では、CSを手掛ける有力企業の開発責任者、並びに、CFを活用して新製品を手掛けた責任者に半構造化インタビューを行なった。結果として、クラウドと製品開発との関係を把握すると共に、通常の製品開発にはみられないプロセスや変数についても明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、ビジネスの場面で、クラウド・ソーシングがどのように活用されているのかについて実態を把握することにあった。研究実績において記したとおり、国内外の有力企業への取材を実施し、実態を解明できている。しかしながら、当初の計画予定であった年度末における定量調査が実現できなかった。この理由は、1~3月に生じた新型コロナウイルスの影響で、企業へのサンプリングが実施できなかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては、前年度1~3月の遅れを挽回すべく、3つの方向性から、並行して複数の研究に取り組む。1つ目は、クラウド・ソーシングに関するレビュー研究である。クラウド・ソーシング研究に関しては、学術検索サイト『Web of Science』において、タイトルに「crowd-sourcing」と入力し検索すると、91本もの論文が検索される。これらの論文についてレビューを行うことで、研究の方向性と課題を整理する。2つ目は、クラウド・ファンディングに関する実証研究である。初年度に取材をしたMakuakeのホームページから、クラウド・ファンディングを募り開発された新製品をサンプルとして抽出し、サーベイ調査を実施し、クラウド・ファンディングと新製品成果の関係を定量的に把握する。3つ目は、クラウド・ソーシングに関する実証研究である。プラットフォーム提供企業に協力を依頼し、クラウド・ソーシング提供者と、それを活用する企業や個人とを対象としたダイアド・データを基に、クラウド・ソーシングの有効性について検証を行なう。新型コロナウイルスの影響により企業からの協力が得られない場合には、定性研究などの別手段を講じる予定である。 これらの3つの研究については、各成果を学術論文として国内学会誌に投稿する予定である。 さらに、本年度には、国内外の企業へのインタビューや定量調査の結果について、研究成果を報告するため、国内シンポジウムを開催する予定である。その際、研究協力者を招聘すると共に、海外からも研究者を招聘する予定である。シンポジウムを通じて、レビューの成果とインタビューの知見を広く一般に発信すると共に、研究者や実務家からフィードバックを得る予定である。 なお、対面での会議が開催できない場合には、zoomなどのオンライン会議を活用することで、研究に支障が出ないようにする。
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