2019 Fiscal Year Annual Research Report
「高さ」を疑う、「高さ」を背負う――新しい都市ガバナンスの社会学
Project/Area Number |
19H01557
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
町村 敬志 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (00173774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 剛史 愛知大学, 文学部, 准教授 (30709267)
山本 唯人 青山学院女子短期大学, 現代教養学科, 助教 (50414074)
丸山 真央 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (80551374)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会学 / 超高層 / インフラ / 都市 / 公共空間 / 権力 / イベント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1)経済成長期を通じてむしろ「超高層化をせずに済ませていた」東京がなぜ失われたのか、2)超高層化の進展は都市の内外にどのような影響を及ぼしたのか、3)超高層化問題に対処する実践がいかに展開してきたのかという問いを、依然「建てずに済ませている」都市との国際比較も含め、社会学的視点から検討する。 2019年度においては、1)超高層化の基礎データとして、東京都内における超高層建造物データベースを作成した。これをもとに変化の推移についての分析を実施した。2)超高層化の要因分析として、金融、不動産、建設、建物サービスなどの企業、官公庁等を対象に、超高層化をもたらした経緯についての資料収集と分析を進めた。3)構造物・インフラのマネジメントと紛争過程に関する事例分析を進めるための一環として、日本学術会議第一部国際協力分科会との共催により公開シンポジウム「公共空間から考えるアジア――多様性・創発性・持続可能性――」を計画した。2020年3月8日に開催する方向で、社会学・人類学・建築学・歴史学など関連分野の報告者を手配し、開催準備を進めてきた。ただし、シンポジウム自体は、新型コロナウィルス感染防止のため、直前で中止となった。4)その他として、地方都市における歴史的建造物保存とその担い手について、山口県萩市を事例とする研究調査(研究代表者による社会調査プロジェクト)と連携をし報告書を作成した。このほか、一連の研究成果の一部を海外で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、日本国内における関連データの収集整理と分析を踏まえ、20世紀末以降、世界でもっとも急激な超高層化を経験した都市のひとつである中国・深セン、20世紀においてニューヨークと並ぶ超高層化の歴史を世界でいち早く経験してきた香港という2つの東アジア都市を対象に、超高層化の歴史、建築物の利用をめぐる諸実践、政策の動向について、現地で調査を実施する計画を立てた。2020年3月中旬に訪問調査を実施する方向で現地関係者への依頼を行い準備を進めていたが、新型コロナウィルスの感染流行により渡航は困難となり、延期を余儀なくされた。かわりに国内での資料収集と分析を継続したが、研究全体の進捗は当初の予定よりもやや遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に実施することができなかった東アジア都市(深セン、香港)での現地調査に関しては、引き続き実施の可能性を検討し、訪問ができる状況になった場合には具体化をする方向で準備を進める。 2020年初頭から世界を覆い尽くすことになった新型コロナウィルスにともなうパンデミックは、都市と都市の建造環境に対しても甚大な影響を及ぼすことが予想される。超高層化ないし「高さ」というテーマも、そうした新しい事態と深く関わっている。そこで、当初の課題設定を前提としながら、パンデミック自体およびポスト「コロナ」状況における展開が都市の建造環境へ及ぼす影響についても、研究を拡大していく。差し当たって東京を対象に資料収集を進める。ただし、感染防止と安全確保を最優先に活動を継続する。
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