2020 Fiscal Year Annual Research Report
戦後社会学理論の言語観の解明ー国民社会化からその終焉までの社会史的背景に照らして
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19H01564
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
多田 光宏 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (20632714)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 方法論的ナショナリズム / 言語社会学 / 国民国家 / 世界社会 / 知識社会学 / 社会学史 / グローバリゼーション / 国語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本基課題はもともと、平成28(2016)年度から実施していた科研費研究課題(基盤C)の最終年度の前年度応募として採択されたものであり、社会学におけるこれまでの主要な諸理論が言語をどのように捉えていたかを、その当時の社会史的背景に照らして、とくに国民国家との関係から明らかにするというものである。 令和2(2020)年度は本基課題の2年目であり、前年度までの研究成果にもとづいて、デュルケムの言語観におけるフランス共和主義の理念的背景を解明した、以下の英語論文を著名な国際誌(IF: 2.040)にて刊行した。 Tada, Mitsuhiro, 2020, “Language and Imagined Gesellschaft: Emile Durkheim’s Civil-linguistic Nationalism and the Consequences of Universal Human Ideals,” Theory and Society, 49(4): 597-630. (First published online: May 04, 2020, DOI: 10.1007/s11186-020-09394-1.) また、本基課題に間接的に関連する理論的テーマで、同じく著名な国際誌に英語論文を発表している。さらに、本基課題に間接的に関連する経験的テーマで、国内で実施した講演の記録も刊行した。その他、令和2(2020)年度は、前年度に引きつづいて研究の基礎となる文献資料の収集ならびにコーパス作成をおこないながら、アルフレート・シュッツの言語観についてまとめるとともに、タルコット・パーソンズの言語観に関する精査にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本基課題は、ヴェーバーやデュルケムから、シュッツやパーソンズ、そしてルーマンやハーバマスらまで、いわば社会学史を貫通するような問題を扱っており、さらにそれぞれの社会学者について、その生きた時代と社会の言語政策や言語状況などを押さえなければならず、とくにこの点については、扱う社会学者ごとに毎回あらたにイチから研究しなければならない。また本基課題は、研究成果の国際発信を前提として取り組んでいる。そのため独仏語などの非母語を英語に翻訳する必要にも迫られており、それにも相当な時間がかかっている。さらに、令和元(2019)年度後半から続く世界的なコロナパンデミック、ならびに家庭事情や校務の多忙化により、当初予想していない数多くの事態に見舞われている。が、幸いにして令和2(2019)年度は、本基課題に直接ないし間接的に関連するテーマで、著名な国際誌に英語論文2本を公刊するなど、十分な成果を出せていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元(2019)年度後半から続く世界的なコロナパンデミック、ならびに家庭事情や校務の多忙化により、今後も、たとえば海外での新たな資料収集ができないのはもちろん、そもそもの研究時間の確保についても困難が生じつつある。現状を打開するような制度的な施策があるわけでもなく、個人のがんばりでやれることには限界があり、研究の推進には大きな支障が予想されるというのが正直なところである。ただ他方、幸いにしてこれまでに一定の文献や資料を収集していることもあり、当面は自研究室でのそれらの地道な基礎分析を中心にして、研究を推進していく予定である。
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