2021 Fiscal Year Annual Research Report
戦後社会学理論の言語観の解明ー国民社会化からその終焉までの社会史的背景に照らして
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19H01564
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
多田 光宏 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (20632714)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 方法論的ナショナリズム / 言語社会学 / 国民国家 / 世界社会 / 知識社会学 / 社会学史 / グローバリゼーション / 国語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、社会学におけるこれまでの主要な諸理論家の言語観を、その社会史的背景に照らして、とくに国民国家との関係から明らかにするものである。令和3(2021)年度は、前年度までの研究成果にもとづいて、ひきつづきアルフレート・シュッツ、ならびにタルコット・パーソンズの言語観について精査をおこなった。とくに前者については、以下のとおり国際学会発表1つ、また海外大学での招待講演1つをおこなった。 1)Tada, Mitsuhiro, 2021, "The Meaning of Language for Alfred Schutz and his Lifeworld in Vienna: From the Perspective of Assimilation and Othering of Viennese Jews," The International Alfred Schutz Circle for Phenomenology and Interpretive Social Science, The 5th Conference hosted by Saint Louis University, the US, June 3, 2021. 2)Tada, Mitsuhiro, 2022, "Alfred Schutz on Race, Language, and Subjectivity: A Viennese Jewish Sociologist's Lifeworld within Transition from Multinational Empire to Nation-State," at the Sociological Seminar hosted by the University of Passau, Germany, February 8, 2022.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本基課題は、ヴェーバーやデュルケムから、シュッツやパーソンズ、そしてルーマンやハーバマスらまで、つまり社会学の創成期から現在まで、いわば社会学史を貫通するような問題を扱っており、さらにそれぞれの社会学者について、その理論内容だけでなく、彼らの生きた時代と社会の言語政策や言語状況などを押さえなければならず、とくにこの点については、これまでこうした観点から整理した先行研究がほどないため、扱う社会学者ごとに毎回あらたにイチから研究し直さなければならない状況である。また本基課題は、独仏語などの非英語資料も数多く扱う一方で、研究成果の国際発信(とくに英語による)を前提として取り組んでいるため、それら非英語資料を自前で英語に翻訳する必要に迫られることが少なくなく、これにも相当程度の時間を要している。さらに、令和元(2019)年度後半からつづく世界的なコロナパンデミック、ならびに家庭事情や校務の多忙化もあって、海外現地での資料収集ができないなど、当初予想していない数多くの事態に見舞われているというのが実状である。だが幸いにして令和3(2021)年度は、本基課題に直接に関連するテーマで国際学会発表1つ、海外大学での招待講演1つを実施するなど、十分な成果は出せているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元(2019)年度後半から続く世界的なコロナパンデミック、ならびに家庭事情や校務の多忙化により、今後も、海外でのあらたな資料収集が難しいのはもちろん、そもそもの研究時間の確保についても困難が生じていると言わざるをえない。現状を打開するための制度的な施策があるわけでもなく、個人の頑張りでやれることにはおのずと限界があり、研究の推進には大きな制約が予想されるというのが正直なところである。ただ他方、幸いにしてこれまでに一定の文献や資料を収集していることもあり、当面は自研究室でのそれらの地道な基礎分析を中心に、研究を推進していきたいと考えている。
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