2019 Fiscal Year Annual Research Report
ダイバーシティにおけるワークプレイス研究-多様性の中で、共に働くこと
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19H01567
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
水川 喜文 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (20299738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海老田 大五朗 新潟青陵大学, 福祉心理学部, 准教授 (50611604)
柳町 智治 北星学園大学, 文学部, 教授 (60301925)
秋谷 直矩 山口大学, 国際総合科学部, 講師 (10589998)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エスノメソドロジー / ダイバーシティ / ワークプレイス研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、エスノメソドロジー・会話分析の知見を用いた「ワークプレイス研究」の射程を、障害者や非母語話者と共にある、ダイバーシティの状況におけるさまざまな共同作業の実践に適用することにより、その社会的相互行為やローカルな秩序における「実践の論理」を明らかにすることを目的としている。本年度においては、ダイバーシティにおける障害者との共同作業、非母語話者との共同作業に関してそれぞれの基礎的な考察を進めると共にフィールド調査・データ分析を行った。 まず、障害者との共同作業に関しては、日本社会学会大会において「ダイバーシティ/ワークプレイス研究の論点整理 -障害と共に働くこと-」と題した共同発表を行いビデオデータの分析も含めた基礎的考察を行った。ここでは、本研究が、カテゴリー使用の問題(障害者カテゴリーとその結合行為など)、会話と相互行為上のテーマ(修復、参与枠組など)、知識の非対称性の問題などの研究が障害者との共同作業に対して新たな視点を提供することを示した。また、研究分担者(海老田)による、障害者と共に働く現場のフィールドワークに基づく研究書『デザインから考える障害者福祉』では、道具、組織、時間に関する共同作業のデザインからワークプレイスの考察を行った(年度内出版確定後、4月刊行済)。非母語話者との共同作業に関しては、研究分担者(柳町)によりNHKアーカイブスを基にしてメディアの中の非母語による交渉場面を中心にデータ分析を行ってきた。以上のように、本年度は、研究代表者と分担者がこれまでに実施した調査、そのデータを再度精査するとともに、基礎的な考察とデータ分析を行い、さらに新たなフィールドの開拓を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、上記の通り、ダイバーシティを掲げた仕事場(ワークプレイス)に関する諸領域の実践・理論の考察を中心に行ってきた。障害者との共同作業については、日本社会学会大会における理論的方法論的整理に関する共同発表を行うと共に、障害者の一般就労や地域支援のフィールドワークをもとにしたワークプレイスのデザインに関わる研究の取りまとめ(研究分担者の研究書出版)などをすすめた。非母語話者との共同作業に関しては「日本人ビジネスパーソンによる共通語としての英語使用 -アジアとヨーロッパのワークプレイスにおける相互行為の分析-」と題するNHK番組アーカイブスを用いたデータ分析を行った(研究分担者・柳町)。これはワークプレイスにおける共通語としての英語使用といった基礎的なデータ分析と位置づけ今後も展開する。これら既存の研究・データの考察と分析に加えて、外国人技能実習生による障害者の介助場面や、母語を共有しない人々が働く職場などの調査フィールドの開拓も行っている。以上の研究の進捗は、研究代表者と分担者の既存の研究の再検討であるとともに、本研究での新たな展開への起点となるものと考える。また、年度末からのCOVID-19による社会情勢の変化に伴い、フィールド調査に関しては、十分な準備と対策を行って研究を実施することとしている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当該年度の調査研究を展開し、既存フィールドおよび新規開拓フィールドに関する調査を続けながら、障害者や非母語話者と「共に働く」ことに関して、エスノメソドロジー・会話分析のワークプレイス研究として深化させていきたい。研究代表者は、(非母語話者による介助を含む)障害者の日常生活と共同実践に関する調査研究を進めており、分析場面としてはカフェにおける共同作業、外国人技能実習生による障害者の日常生活介助場面などがあげられる。これらは関係するNPOと連携して研究倫理に配慮して進めていきたい。研究分担者(柳町)は、母語を共有しない人々が働く職場(母語でない日本語あるいは英語を使って働く場面)やサービスエンカウンターの場面に関しては、研究分担者(柳町)を中心に、データを用いて会話分析的な調査を継続する。研究分担者(海老田)を中心としたものとしては、障害・社会福祉や医療に関わるさまざまな現象に対してエスノメソドロジー的な研究を継続する。例えば、地域のストレングスを生かして就労支援を行う精神障害者就労支援施設、カフェにおける就労支援実践やそのデザインについての分析を継続する。研究分担者(秋谷)は、ダイバーシティを掲げた仕事場のデザインに関する他分野の実践・理論のレビューを進めることで、ワークプレイス研究の方法論的研究・応用可能性の研究を推進する。これらの代表者・分担者の研究にはそれぞれ適切な研究協力者をおいて、調査を円滑に進める。また、COVID-19に関わる社会情勢にも対応してフィールド調査・研究を進めていきたい。 このように、本年度は、従来のフィールド加えて新たに開拓したフィールドにおける共同作業の実践に関する研究を行うことでワークプレイス研究を独自に展開する方向性を見出していきたい。
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Research Products
(4 results)