2020 Fiscal Year Annual Research Report
知的障害のある人の性をめぐる社会的実態と性教育のあり方に関する研究
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19H01568
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Research Institution | Urawa University |
Principal Investigator |
河東田 博 浦和大学, 社会学部, 教授 (80258318)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 知的障害 / 性 / 社会構築 / 日本 / 特別支援学校 / 就労支援事業所 / 性に関する認知・理解力 / 「性の講座」(試行) |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度は、課題1(文献研究等を通して知的障害のある人たちの性が歴史的・社会的にどのような取り扱いを受けてきたのかを構造的に明らかにすること)の解明、課題2(全国調査を通して教育・就労の場における性に関する教育の実態を把握すること)の解明を行った。当該年度は、課題2の全国調査結果の分析を行うと共に、課題3(就労支援事業所で働く知的障害のある人が性に関する事柄をどのように認知・理解しているか)の解明、課題4(知的障害のある人に性教育を行う際、どのような事柄を、どのように伝えたらよいか)の検討を行うことにしていた。 課題2の全国調査結果の分析から、養護教諭によると、特別支援学校では高い割合(約90%)で生徒の性の問題に直面しており、性に関する教育の必要性を実感していた。そのため、学習指導要領に基づいて学校全体で性に関する教育を行っていた。一方、サービス管理責任者によると、就労支援事業所でも高い割合(約90%)で利用者の性の問題に直面していたが、働くことが中心で時間が取れないなどの理由から性に関する教育があまり行われていない実態があることが分かった。このことは、学校で行っている性に関する教育が学校を卒業するとなされなくなり、性に関する教育の継続性が図られないまま社会人になっていることを意味していた。また、課題3の就労支援事業所で働く知的障害のある人の性に関する調査から、利用者の性に関する認知・理解力を概ね3タイプ(高・中・低)に分けることができるということが分かった。なお、当該年度に予定していた課題4の検討を目指す就労支援事業所における「性の講座」(試行)は、コロナ感染拡大の影響を受けて実施できなかった。 次年度は、課題2の利用者実態や課題3で明らかになった利用者の性に関する認知・理解の実態を基に、課題4の就労支援事業所における「性の講座」(試行)に取り組んでいく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は、課題1(文献研究等を通して知的障害のある人たちの性が歴史的・社会的にどのような取り扱いを受けてきたのかを構造的に明らかにすること)の解明、課題2(全国調査を通して教育・就労の場における性に関する教育の実態を把握すること)の解明を行った。当該年度は、課題2の全国調査結果の分析を行うと共に、課題3(就労支援事業所で働く知的障害のある人が性に関する事柄をどのように認知・理解しているか)の解明、課題4(知的障害のある人に性教育を行う際、どのような事柄を、どのように伝えたらよいか)の検討を行うことにしていた。 当該年度の進捗状況は、以下の通りであった。 課題2の全国調査結果の分析から、養護教諭によると、特別支援学校では高い割合(約90%)で生徒の性の問題に直面しており、性に関する教育の必要性を実感していた。そのため、学習指導要領に基づいて学校全体で性に関する教育を行っていた。一方、サービス管理責任者によると、就労支援事業所でも高い割合(約90%)で利用者の性の問題に直面していたが、働くことが中心で時間が取れないなどの理由から性に関する教育があまり行われていない実態があることが分かった。また、課題3の就労支援事業所で働く知的障害のある人の性に関する調査から、利用者の性に関する認知・理解力を概ね3タイプ(高・中・低)に分けることができるということが分かった。なお、当該年度に予定していた課題4の検討を目指す就労支援事業所における「性の講座」(試行)は、コロナ感染拡大と緊急自粛宣言の影響を受けて実施できなかった。 なお、「性の講座」(試行)実施に向けた動きが各就労支援事業所で既に整えられており、コロナ感染再拡大がない限り次年度は研究が計画通りに進んでいくものと考えており、「研究はおおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
学習指導要領及び解説では、性教育に関する内容について、「児童・生徒の実態や課題に応じて、教育活動全体を通じた各教科等において、関連付けて指導すること」と記されている。また、性教育手引書では、特別支援学校における指導事例として、「1.健康診断を受けよう、2.ストレスへの対処、3.宿泊的行事の事前学習-風呂に入ろう-、4.健康や体の変化の理解、5.自分らしさをみつけよう、6.リラックスしよう、7.身だしなみを整えよう、8.自分や他者がかけがえのない存在であることを発見しよう、9.友達と関わるときのマナーやルールを考えよう、10.SNSの安全な使い方、11.その他」を示している。知的障害のある子どもたちに「性に関する教育」を行ってから卒業生を送り出していることが分かる。しかし、学校を卒業し、社会に出て働くようになると、働くことが目的のこれらの現場ではとても忙しく、あまり「性に関する教育」がなされなくなる。そこで、就労支援事業所で「性に関する教育」をどのような内容と体制で実施できるようにするためにはどうしたらよいのか、が課題となってくる。 本研究では、2年間の研究成果(課題1~3の解明)を基に、2021年度1年間をかけて課題4の就労支援事業所における「性の講座」(試行)に取り組む予定である。知的障害のある人の性に関する認知・理解力にはタイプがあるものの、一人ひとりの性に関する認知・理解力は様々で、個別性がある。個別性のある対象者をどのように受け止め、どのように「性の講座」(試行)を展開していったらよいのか次年度の大きな課題となる。また、2021年度の研究成果を基に、2022年度は課題5(性のノーマライゼーション化を図るための環境の整備)に取り組み、全国性教育セミナーなどを開催しながら、関係者から意見を聴取し、最終報告書作成へと歩を進めていく予定である。
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Research Products
(4 results)