2021 Fiscal Year Annual Research Report
Social and geographic mobility and life-course: Studies using multi-generational panel data
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19H01569
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
黒須 里美 麗澤大学, 国際学部, 教授 (20225296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津谷 典子 慶應義塾大学, 大学共通, 教授 (50217379)
村山 聡 香川大学, 教育学部, 名誉教授 (60210069)
川口 洋 帝塚山大学, 文学部, 教授 (80224749)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パネルデータ / ライフコース / 東北 / 災害 / 宗門人別改帳 / 歴史人口学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世日本の宗門人別改帳をベースとした東北地域の多世代パネルデータ(約 57万人年)を活用し、庶民の家族・ライフコースと社会的・地理的移動の関係を探る。本年は、研究目的である以下の3点を中心に進めた。 (A) 家族・ライフコースと社会的・地理的移動分析: ①人別改帳をベースとした二本松藩(現在の福島県)の多世代パネルデータベースについて、構築までのプロセスを整理し、ミクロデータとしての特長を明らかにするとともに、Xavier Dataを利用した研究サーヴェイを行った。さらに歴史人口学のデータと分析を系統的にまとめた。②多変量解析によって町型と農村型の結婚パターンの違いと初婚をもたらす要因の類似性を明らかにした。③養子の生存確率分析から実子と養子の死亡リスクの差が明らかにし、人口指標と日本の家族制度の関係性を示した。①-③について和文・英文の学術雑誌から出版した。 (B) データベース拡充と質的資料の統合: ①二本松藩の人別改帳(安達郡の長屋村、本宮村、裏塩沢村、安積郡の大槻上・下町など)の整理解読と基礎整理シートの作成、および入力(岩瀬郡大桑原村・安達郡片平村など)を行った。②昨年度に引き続き、二本松藩への人口供給元である越後の宗門帳から約50ヶ村の個人・世帯情報の入力とチェックを行った。 ③会津藩金井沢村における稲の作況記録からデータベース構築を進めた。 (C)東ヨーロッパとの比較研究:昨年度に引き続き、センサスタイプの歴史資料を有する南ボヘミアに関して、自然災害への行政的対応の考察を進めた。その際、研究分担者独自の概念であるLiving Spaces(生命空間)アプローチに関して、近世近代日本等との対比的な研究を進め、特に地域把握単位に関する詳細な比較研究の重要性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多世代パネルデータ利用によるライフコース分析は順調に進み、オンラインによる国内また国際学会発表、国際学術雑誌への出版などの成果があった。一方、コロナ禍のため本年度に予定していた海外研究協力者の招聘ができず、一部の共同研究作業はZoomによる限定的なものとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的である以下の3つの項目について、引き続き分析とデータ構築、資料収集を行い、最終年度としてのまとめと今後の計画を立てる。 (A) 家族・ライフコースと社会的・地理的移動分析: ①多世代パネルデータベースを用い、地域経済(米価)と世帯の社会経済的地位(持高)が同居家族を介して人口学的変数に与える影響について分析を進める。特に移動がライフコースに与える影響として死亡と移動分析を発展させる。②人の移動イベントを通した地域の繋がりとその家族・ライフコースへの影響の理論化を図り、これまでの研究成果と今後の展望をまとめる。 (B) データベース拡充と質的資料の統合: ①他地域との比較と、より詳細な分析を可能にするため、東北地域のデータ整備を継続する。②二本松藩への人口供給元になっている村落の構造を理解するために越後(現在の新潟県)の人口データの修正更新を継続し、系統的な基礎統計算出を試みる。 ③会津藩の金井沢村における稲の作況データの入力を進め、(A)のモデルへの組み込みを検討する。 (C)歴史人口の比較研究: 南ボヘミア地域の移動情報とともにチェコ共和国全体の人口調査に着目し地域単位の研究フレームワークを検討する。 研究成果について、日本人口学会、WEHC (世界経済史学会)、IUSSP (国際人口学会)セミナー、SSHA (社会科学史学会)などでの口頭発表と、学術雑誌への投稿を目指す。
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