2019 Fiscal Year Annual Research Report
「小さな共同体」の環境保全力に関する研究:生活環境主義の革新的展開に向けて
Project/Area Number |
19H01582
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
古川 彰 関西学院大学, 社会学部, 教授 (90199422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊地知 紀子 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (40332829)
松田 素二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50173852)
土屋 雄一郎 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70434909)
阿部 利洋 大谷大学, 社会学部, 教授 (90410969)
中野 康人 関西学院大学, 社会学部, 教授 (50319927)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生活環境主義 / 環境保全力 / 災害文化 / 小さな共同体 / 村の日記 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究目的の達成に向けて次の二点を課題としている。第一の課題は、生活環境主義の汎用性(応用力)を高めるという課題である。第二の課題は、共同体の境界を越えて生起する深刻で重大な危機(災害や紛争など、これまで生活環境主義では対処できないと批判されてきた破局的な危機)に対して、「小さな共同体」がいかにそれと向き合い、対処し、その苦難を乗り越えてきたかについて、日本、ネパール、カンボジア、韓国、ウクライナ、ケニアの小さな共同体の集約的調査から明らかにすることである。 2019年度は、共同研究のプラットホームである江州知内村「記録」(通称、「村の日記」)から災害部分を取り出しプロジェクトの共通認識とするための研究会、共同作業をおこなった。並行して代表者および分担者はそれぞれのフィールドでの調査を実施した。代表者である古川はネパール、愛知県矢作川流域を中心に災害関連史資料、とりわけ農業用水関連の被害と復旧についての収集と聞き取り調査を実施した。分担者である松田はケニア、三重県熊野市、阿部はカンボジア、伊知地は済州島での調査を実施した。中野はネパールで調査予定だったが新型コロナウイルス感染症の流行により実施できず。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者・分担者は長期にわたって共同研究を行ってきており、研究目的・方法については十分に共有している。2019年度計画である各自のフィールド調査においてもその経験は活かされ、目的に向けて一歩前進することができた。 2月3月に予定していた代表者、分担者のフィールドワークは新型コロナウイルス感染症の拡大のため実施が出来ず当初予定した研究進捗目標には達しなかった。また年度末に予定していた合同研究会も実施を見合わせざるをえず、お互いの研究成果の摺り合わせを十分に行うことはできなかった。本プロジェクトではクラウド・データベースを利用したデータ共有とチャットなどでのディスカッションを継続してきたので大きな支障はない。しかし、オフラインでの研究会が出来ないことが判明した段階でオンライン研究会に切り替えるための試行を行っている。2020年度に入ってもこの状況が続く場合は、フィールドでの調査活動だけではなく研究計画そのものの見直しも必要となるだろう。研究会についてはオンラインでの実施を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、生活環境主義のバージョンアップにむけて、代表者らが1980年代に生活環境主義を提唱するきっかけとなった琵琶湖北西岸の「小さな共同体」において、集約的な共同調査を実施し、この共同体の270年におよぶ「村の日記」と関連史料を共通のプラットホームとして設定する。そのうえで、各メンバーがこれまでも調査を続けてきた各エリアでの調査を継続する。 1)日本:水害常習地の東紀州、矢作川地域、琵琶湖湖西地方の知内地区の災害対応知(古川、松田、土屋)。 2)ネパール:大規模地震で深刻な被害を受けたカトマンズ盆地コカナ地区のレジリエンス(古川)。 3)カンボジア:内戦で社会が分断され紐帯が切断されたカンボジア東部バイリン地区の試み(阿部)。 4)韓国:大規模資本によって分断された漁村共同体の抵抗知(伊地知)。 5)ウクライナ:原発事故汚染指定地区からの避難命令を新たに読み直す共同体の知恵(土屋)。 6)ケニア:貧しさから熱帯雨林の伐採を行う村人に対する共同体の支援(制裁ではなく)の思考(松田)。7)1)から6)のローカルな人々の意識や行動、小さな共同体に蓄積された「集合知」をデジタル化し、グローバルな社会問題の改善に資する。収集された質的データをデジタル化するだけでなく、調査データの規格とその運用ツールを整備する(中野)。 こうした「小さな共同体」が、上位の政治権力から受ける制度的政策的指示やグローバルNGOなど外部の組織からの金銭援助や「正義」の介入に対して、どのようにそれを受容変換しながら現実を作り直し、地域の生態環境を保全のために創意工夫を凝らした実践を組織してきたかについて明らかにする。
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