2019 Fiscal Year Annual Research Report
International Research Project on Primary Resources of Exiled Intellectuals: On Sociology for "Good Life"
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19H01585
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Research Institution | Nagasaki Wesleyan University |
Principal Investigator |
吉野 浩司 長崎ウエスレヤン大学, 現代社会学部, 教授 (40755790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅村 麦生 日本大学, 文理学部, 助手 (70758557)
吉田 耕平 首都大学東京, 人文科学研究科, 客員研究員 (90706748)
磯 直樹 慶應義塾大学, 文学部(三田), 特別研究員(RPD) (90712315)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ロシア / アメリカ / フランス / スラブ / 亡命知識人 / 社会学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、スラブ由来の亡命ロシア知識人社会学者が、世界の社会学に与えたインパクトを明らかにし、それが〈善く生きる〉ための社会学を構築しようとするものであったという事実を明らかにすることである。2019年度の計画では、早期に研究会を開き、問題意識と研究基盤とを共有することを予定していた。そのため、6月に代表者研究協力者全員で、第1回目の打ち合わせを行い、作業の分担と工程の確認を行った。さらに同6月の社会学史学会では、研究代表者および分担者(1名)が、下記のテーマでそれぞれ研究発表を行った。 ・アロンとブルデュー:2つの「革命」の間で ・亡命ロシア知識人としてのP.A.ソローキン 次年度の一斉海外調査に向けた基礎文献の読解としては、2014年よりPalgrave Pivotから刊行されている各国の社会学史SociologyTransformedシリーズのうち各班の調査対象国となる巻を批判的に検討する作業を進めた。 他方、本研究のロードマップの一部となる〈善く生きる〉ための社会学について、7月にアメリカで開催された国際比較文明学会で、「On Sociology for “Good Life”: The Last Challenge of P.A. Sorokin」と題する発表を行うことができた。またモスクワでの資料調査を行った。また10月にソローキン生誕130年を記念する国際学会(スィクティフカル)で「Sorokin as A Russian Emigrant Sociologist」と題する発表を行った(Питирим Сорокин и парадигмы глобального развития XXI века(к 130-летию со дня рождения)。 比較的順調に進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロシアの国際学会では、ロシア、イタリアをはじめとする旧知の社会学者らと有意義な意見交換ができた。またラトビアから来たコバルチュク氏と知り合ったことで、ロシア知識人が亡命の拠点のひとつとしたリガの情報などが入手できた(1922年にロシアから亡命した大学や政府関係の一団が、宿泊先にしたリガのホテル「パルク」の写真、そしてそれを伝える新聞記事など)。またアメリカで開催された比較文明学会で発表したことで、ロシアにおける亡命知識人の研究動向を、アメリカの研究者に伝える機会を持つことができた。 国内での研究会では、各自の基礎文献となる資料を、全体で共有し、研究成果としてまとめるさいのトピックの選定をすることができた。〈善く生きる〉ための社会学の原点として、ロシアのミハイロフスキー、クロポトキン、デロベルチを取り上げること、また彼らの各国での受容について深めていくこと、さらに彼らの後継者が誰にあたるのかを特定することなどが今後の課題として確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、海外の調査を本格的に行う。具体的には、ロシアをはじめとするスラブ地域での亡命知識人の足取りを追う作業、とくに各地のアーカイブに残されている資料の発掘と研究資料化を進めていく。そのための各国の調査先とのスケジュールの調整を行っておく。さらに亡命知識人が、亡命先で選んだ国々での業績を総括することで、個々の亡命知識人の歴史的な意味づけを行う。他方、本研究の基礎的役割をはたす著作『利他主義社会学の創造』(仮)を刊行し、本研究のいっそうの促進を図る(2020年5月刊行予定)。また亡命知識人論としては、本年度に行った研究の共通認識と、共通目標を「スラブ地域からの亡命知識人が遺した遺産と展望」(仮)としてまとめていく。コロナなどにより予期せぬ渡航の困難が起こることもありえるので、現地の研究者との連絡を密に取り、渡航が困難になった場合でも、現地の資料収集や、Web会議の開催などの代替手段を検討する。
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Research Products
(10 results)