2020 Fiscal Year Annual Research Report
コンピテンシーに基づくスーパーバイザー養成プログラムのモデル構築
Project/Area Number |
19H01603
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
岡田 まり 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (40309076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 靖子 久留米大学, 文学部, 教授 (30389580)
潮谷 恵美 十文字学園女子大学, 教育人文学部, 教授 (70287910)
野村 豊子 日本福祉大学, スーパービジョン研究センター, 研究フェロー (70305275)
潮谷 有二 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 教授 (90285651)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ソーシャルワーク・スーパービジョン / スーパーバイザー / コンピテンシー / ソーシャルワーカー / 福祉専門職 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の目標は、ソーシャルワークにおけるスーパーバイザーのコンピテンシー項目リストを作成することであった。そのために先行研究に加えてノミナル・グループ・プロセス法と個別インタビューによるデータ収集を行って項目(案)を作成し、さらにコンピテンシー項目を確定するためにデルファイ法を用いた郵送調査を実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大により個別インタビューは見送らざるを得ず、ノミナル・グループ・プロセス法によるデータ収集のみ実施した。郵送調査も延期となった。 ノミナル・グループ・プロセス法は、スーパーバイザーとしての経験とスーパービジョンについての高い見識をもつ福祉実務者5人のグループと研究者4人のグループで実施した。両グループそれぞれにコンピテンシーについて情報提供をしたうえで「優れたスーパーバイザーとはどのような人か」についてブレーンストーミングでアイデアを出し合ってリストにまとめ、それらの重要度について5段階で評価してもらった。実務者グループでは44項目が出され、最も重要度が高かったのが「バイジーの力を信頼できる」、次いで「専門的な知識と技術がある」「スーパーバイジーと信頼関係が築ける」などであった。研究者グループでは86項目が出され、「ソーシャルワークの価値基盤に根ざしている」「スーパーバイジーとの関係性にきちんと着目する」「スーパーバイジーの置かれた環境も含めてアセスメントができる」などが最も高く評価された。 これらの項目についてMAXQDAを用いてコーディンクした結果、①スーパービジョンの方法、②スーパーバイザーの態度・視点、③スーパービジョン関係、④ソーシャルワークの価値・倫理、⑤専門的な知識・技能の五つのカテゴリーに分類できた。それぞれのカテゴリーで高評価のものをコンピテンシー項目(案)とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の対象者は福祉施設や医療機関に勤務するソーシャルワーカー(福祉専門職)であり、新型コロナウイルスの感染が拡大しているなかでは感染を避けるために外部での対人接触を避けなければならず、さらに福祉・医療の現場では利用者および職員の感染により業務が逼迫して多忙を極め、研究への協力を得られる状況ではなかった。ノミナル・グループに関しては、オンライン経験者の協力が得られて実施できたが、個別インタビューの実施については断念したためデータ収集が不十分なままとなっている。そのため、コンピテンシー項目を確定するためのデルファイ法による郵送調査も実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、インタビューを対面以外にオンラインでも実施したり、過去のデータ(対象者からは研究目的の範囲内での継続的なデータ利用について了承を得ている)も活用してコンピテンシーに関するデータを収集する。そして、それらのデータに基づいて、今回作成したコンピテンシー項目(案)をバーションアップさせる。 第二に、コンピテンシー項目(案)からコンピテンシー項目を確定するための方法をあらためて検討する。当初はデルファイ法を用いた郵送調査もしくはインターネット調査を実施する計画であったが、今回のノミナル・グループ・プロセス法から得たデータでは、研究者と実務者の間で、また経験の程度等によってコンピテンシーに関する意見に異なる傾向がみられた。たとえば、実務者ではスーパーバイザーとスーパーバイジーの関係性やコミュニケーションについての意見が多かったが、研究者では価値・倫理や実践のレベルにまで幅広く言及されていた。これらの傾向について詳細に検討したうえで、コンピテンシー項目確定にあたっては、デルファイ法ならば対象者の選定を再検討するとともに、エキスパートレビューなど他の方法も検討する。 第三に、コンピテンシーを習得するための研修プログラムのあり方と方法について考案する。プログラムについては、教育理論を踏まえるとともに、福祉現場の状況や組織や職員の実態に応じたものとなるよう設計する。
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