2020 Fiscal Year Annual Research Report
京野菜に特異的に含まれる発がん抑制成分のヒトへの適用を目的とした食品機能性研究
Project/Area Number |
19H01610
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
中村 考志 京都府立大学, 文学部, 教授 (90285247)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 俊夫 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 施設長 (20342884)
岡本 繁久 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (30211808)
佐々木 梓沙 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 助手 (90761966)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 和食材 / MTA / 大腸がん / 乳がん / MTAE / MTPE |
Outline of Annual Research Achievements |
京野菜の桂ウリを食べたときに,胃内で生成するメチルチオ酢酸(MTA)がもつ,発がん抑制効果の特性と機構を明らかにする研究をおこなった. 1.MTA経口投与により,高脂肪食-DMBA誘発のF344雌性ラット乳腺発がんの抑制傾向がみられた. F344雌ラット60匹を3群に分け,5-9週齢時に乳腺発がんを促進する目的で各群に高脂肪食を与え,7週齢時には乳腺発がん物質である7,12-ジメチルベンズ[a]アントラセンを50 mg/kg体重の用量で1回強制経口投与した.10週齢時以降はMTAを0(対照),0.0025,0.005%の濃度で滅菌水に溶解して飲水投与するとともに,乳がんの発生を触診にて観察した.触診で検出できた乳がんの発生数は対照群に比べ,MTA0.0025,0.005%群で低値傾向を示したが,発生頻度と体積に明らかな差はなかった.また,剖検・組織学的観察で見つかった乳がんの発生数も対照群に比べ減少傾向を示した.剖検後の非がん部の乳腺組織から抽出した総RNAのDNAマイクロアレイ解析をおこなった結果,発現上昇した遺伝子,発現低下した遺伝子を複数抽出することができた.以上より,MTAはDMBAによるラット乳腺発がんに対する抑制作用があり,乳腺組織における複数の遺伝子の発現を変化させる可能性が示された.
2.MTA経口投与によるヒト大腸がん細胞移植の雌性ヌードマウスの腫瘍増殖抑制傾向がみられる有効投与量が決定された. 7週齢雌性BALB/cSlc-nu/nuマウスの後頚部または右背部皮下にRCM-1細胞を移植した後,MTAを自由飲水させ,MTAの腫瘍増殖抑制効果が観察されるために必要なMTA投与量の決定を試みた.相対腫瘍体積を指標としてMTAの腫瘍増殖抑制効果が観察される投与量の最適値は250 ppmと決定した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MTAのがん予防効果と治療効果について検討した結果,MTAを経口投与した動物で,DMBA誘発のラット乳腺発がんに対する抑制作用が観察される点で研究の前進が見られている.MTAによる遺伝子サイレンシング作用機構を解明する無細胞試験系の確立について研究の前進が見られている.上記観点から,研究がおおむね順調に進展していると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
1.メチル化解析によるMTA遺伝子サイレンシング機構のin vitroでの解明:a. MTAのメチル基のDNAへの転移の有無を明らかとするため酵素的転移の試験系を確立し,シトシンとMTAとメチル基転移酵素の反応による5mCの生成の有無を電気泳動法とRF-HPLCで確認する.b. MTAのヒト大腸がん細胞(RCM-1細胞)における分化関連遺伝子の発現抑制機構を明らかとするため,MTA をRCM-1細胞に処理し,関連遺伝子プロモーター領域のメチル化の増加を,改良したビックス(Bisulfite Cloning Sequence)法により,5か所のバイサルフェイト反応の完全性判定部位を同時増幅しながらCpGアイランドのメチル化頻度を比較検討する.
2.MTAの哺乳動物での発がん予防作用の確認:a. ヒト大腸がん細胞移植動物での腫瘍重量抑制効果の確認は,7週齢雌性BALB/cSlc-nu/nuマウスの右背部皮下にRCM-1細胞を移植した後,2019年度から継続した実験の結果から有効量の250 ppm MTAを自由飲水させ,腫瘍体積の経時的変化の観察と腫瘍摘出後には,腫瘍組織のConnexinとCyclinE2の発現を免疫蛍光染色法とウエスタンブロット法で確認する.b. MTAの分化誘導作用のF344ラットを用いた検討では.ラット大腸に対するMTAの作用を明らかにするため,4週間飲水投与後にDNAマイクロアレイを用いる解析をおこなう.組織学的には変化のない粘膜でも発現変化がみられる遺伝子を抽出する.
|