2020 Fiscal Year Annual Research Report
固形状食品の咀嚼挙動がテクスチャーおよびフレーバーの知覚に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
19H01618
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
神山 かおる 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 主席研究員 (00353938)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日下部 裕子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, グループ長補佐 (90353937)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 食品 / テクスチャ― / フレーバー / 味覚 / 咀嚼 / 筋電図 / 唾液 / モデル舌 |
Outline of Annual Research Achievements |
破壊特性を制御しやすいジェランガムゲルを固形状食品のモデルとして用いた。アシル基含量と濃度を変えることにより、歯で噛む必要のある硬さと舌で容易に潰せる硬さのゲルを6種類調製した。テクスチャーアナライザを用いた圧縮破壊過程において、下方からと側方からの二方向のビデオ観察を併用することによって、破壊点と破壊時の真の応力を計測した。舌による押し潰しを模擬するため、透明なウレタンゲルでモデル舌を作製し、テクスチャーアナライザに組み込んでジェランガムゲルの圧縮破壊過程を観察した。モデル舌の弾性率がジェランガムゲルより低い場合でも、やわらかいモデル舌に食品ゲルが包み込まれ、変形が阻害され食品が破壊されない場合が観察された。 味刺激による作用を排除するため、フレーバーを添加しない寒天、脱アシル化ジェランガム、ネイティブジェランガムゲルを調製し、ゲルの離水率、破壊特性、破壊後の表面積を調べた。これらのゲル咀嚼時に分泌される唾液量は、離水率がジェランガムゲルでは、離水率の高い寒天ゲルよりも多かった。 実食品を用いた試験として、米飯の自由な咀嚼挙動を、ヒトの左右の咬筋および舌骨上筋群から表面筋電位を測定して調べた。茶碗と箸を渡された被験者が自ら自由一口量を口に入れる条件と、実験者が固定一口量9gをスプーンで被験者の口に与える条件で比較した。同一被験者同一試料の固定一口量9 gを咀嚼した時の値を基準とし、自由一口量および筋電位変数の相対値を求めた。一口量比と筋電位変数比は強い線形関係が認められ、その傾きは、摂食時間と咀嚼回数でほぼ0.33、嚥下までの咬筋活動量で約0.5であった。個人内での習慣的一口量、咀嚼挙動は安定しているため、固定一口量の咀嚼筋筋電図を測定し、自由一口量を測定すれば、自然な咀嚼挙動が推測できると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年前半は新型コロナウイルス感染症のために、海外も含め学会が軒並み中止になり、予定していた発表ができなくなった。出張の制限があり、旅費は使えなかった。 また、感染のリスクのあるヒトの咀嚼測定やヒトの咀嚼後に唾液を含む食塊を採取し、分析する研究は困難となった。そこで計画変更し、歯による咀嚼、舌による押し潰しを模擬する機械を設計し、機器による模擬食塊の分析を行うこととした。機器の整備などに時間を要したため、実験計画が遅れた。実際の試験は、3ヶ月ほど遅れて実施し、咀嚼模擬実験に関する人工舌、人工唾液等の消耗品と、実験補助者の賃金が必要なため、予算の一部を繰り越した。 ヒトの咀嚼試験の代わりに、歯による咀嚼や舌による押し潰しを機械で模擬する研究を進めることにした。2020年10月ころから実験計画の見直しを行い、ヒトの代わりに咀嚼を模擬する機器の調査、試作のための部品発注、咀嚼模擬機器の試作、咀嚼模擬機器による食塊採取法の検討、咀嚼模擬機器で作成した食塊採取、咀嚼模擬機器による食塊の分析を実施した。装置の設計に3ヶ月を要したため、食塊の採取、分析は2021年度に3ヶ月持ち越された。 前年度までに測定していたデータを用いて、論文発表に注力した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスがいつ流行するのかわからず、長期的な研究計画が立てづらい。そのため当初の計画通りに研究が進められなかった。とくにヒトの咀嚼測定、咀嚼後に唾液を含む食塊の分析は、感染のリスクが高く、行うべきでないと考えた。今後も、咀嚼を模擬する機器を用いて食塊を作製し、その分析を中心に実施する。
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Remarks |
Ogawa, Kohyama, Kusakabe, Food Science and Technology Research AWARD for Best Paper受賞
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Research Products
(8 results)