2019 Fiscal Year Annual Research Report
学校から職業への移行と人間形成に関するビオグラフィー的研究
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19H01632
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
鳥光 美緒子 中央大学, 文学部, 教授 (10155608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野平 慎二 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50243530)
藤井 佳世 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (50454153)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人間形成 / 学校から職業への移行 / ビオグラフィー法 / ライフヒストリー法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)2019年5月1日、研究代表者と分担者の3名で、本研究の目的と計画を確認・共有し、今年度はインタビュー調査を中心とすることを決めた。インタビュー対象者としては、大学卒業後10年前後の男女を対象と すること、インタビュー方法についてはこれまでの共同研究において用いてきたシュッツェの方法を採用することとし、夏休みの期間中にそれぞれがインタビュー調査を行うことを決めた。 2)夏休みから2020年2月にかけて、次のようんインタビューを実施した。野平と藤井がそれぞれ1名をインタビュー、他方鳥光は、首都圏の私立大学のある専攻研究室の同意を得て、同専攻の、2006年度、2007年度、2008年度入学生にハガキでインタビュー調査を依頼、返信のあった方たち16名に対してインタビュー調査を行った。その際、雨宮沙織(東京学芸大学)と眞鍋倫子(中央大学)にインタビュアーとして研究に協力することを依頼し、雨宮が1名、眞鍋が5名、鳥光が10名のインタビューを担当した。両者にはまた、インタビュー・データの分析をも依頼した。インタビューの具体的手順と、インタビュー結果の概要の共有のため、鳥光、真鍋、雨宮の3名で、2019年9月11日中央大学にて、検討会を行った。 3)2019年10月13日、広島大学において、研究計画の全容の説明と、またこの間に行ったインタビュー調査についての中間的報告を行い、山田浩之(広島大学)と尾川満宏(愛媛大学)によるコメントを受けた。出席者は、山田と尾川の他、鳥光、野平、藤井、雨宮(ウェブ参加)であった。 4)2020年2月1日、中央大学にて当概年度の最終報告会を行った。参加者は、鳥光、野平、藤井、山田、雨宮、眞鍋の6名。山田以外の5名はそれぞれ、自分が行ったインタビューから1つを選んで、その概要と分析の見通しを提示、最後に講評を山田に依頼した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インタビュー調査は、予想していた以上に順調に進んだ。研究開始当初には、調査協力者をどのような方法で確保するのかが課題であったが、ハガキによる募集という方法によって予定していた以上の調査協力者を得ることができ、研究分担者が実施したインタビューを合わせてると当初予定していた10名程度の倍近い、19名にインタビューを実施した。しかもその多くが、分析するに値する内容豊かなインタビューであったことが、これまでの3回行われた研究会の結果明らかになっている。 ただし、首都圏の大規模私大の卒業生が、調査協力者の大半を占める結果となったことなど、調査に関連する課題も浮上している。この調査は、一般化可能な相関関係の析出を目的とする量的な研究とは異なるため、サンプルの偏りが大きな問題になる訳ではないが、今後調査を行うにあたっては、出身大学、出身地、現在の居住地など、多様な背景の調査協力者を得ることを念頭におく必要がある。 また、これは研究計画上、当然のことであるが、2019年度においては調査の立案実施に重点をおいたため、収集されたデータの本格的な分析については来年度以降の課題として残されている。 一つ、必ずしも計画通りに行うことができなかったのは、3年次に予定しているドイツの人間形成論的ビオグラフィー研究者とのシンポジウムに向けたドイツ訪問である。これについては、調査に多くの研究費がかかったこと、またより基本的な要因として、日本側の研究の一定の進展がないと、有効な相互の対話を見込めないと判断したことが関係している。この点については今後、シンポジウムの開催の時期をずらすことも含めて検討することが必要であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1) インタビュー調査については、これまでに実施された調査協力者とは異なる社会的背景の方を中心に、若干名の調査を予定している。そのほか、すでにインタビューを行った数名に関して、追加でインタビューする必要のある事例が若干あり、り、これらについては2020年度中にその実施を見込んでいる。 2) また、2020年度においては、インタビュー事例の分析とその検討に研究計画の重点を移す。現在のコロナ感染の蔓延などの状況によっては、対面式の研究会の開催は難しくなることも予想されるため、オンラインでの会議などの方法も考えている。 3)3年次に予定していたシンポジウムについては、その開催時点を4年次に遅らせることを検討している。その開催に向けた活動として、2020年度以降、次の二つの研究活動を計画している。 一つは教育哲学会もしくは教育思想史学会など、研究代表者・分担者の専門領域関係の学会におけるラウンド・テーブルなどの企画である。経験的研究にもとづく人間形成概念の再検討という、原理的な課題と、人間形成においてもつ仕事の意義という、仕事と人間形成の問題連関に位置付けられる具体的な課題と、双方の観点から企画することを検討している。 第二に「学校から職業への移行」と若者の成長という問題群は、従来主として、教育社会学ないし社会学の領域で論じられてきた問題であり、これまでも研究会などに、教育社会学の研究者を招いて、本研究の概要や中間報告に対する講評を依頼してきた。2020年度以降もその活動は継続するが、合わせて、教育社会学会や子ども社会学会など、教育哲学領域以外の学会において、ラウンド・テーブルなどを企画することを検討している。
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