2019 Fiscal Year Annual Research Report
「教える」専門家の養成を学問として構築する「教育学」モデルの研究
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19H01633
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Research Institution | Den-en Chofu University |
Principal Investigator |
生田 久美子 田園調布学園大学, 大学院人間学研究科, 教授 (80212744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉國 陽一 田園調布学園大学, 子ども未来学部, 准教授 (00839219)
尾崎 博美 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 准教授 (10528590)
畠山 大 岩手県立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10616303)
岩田 康之 東京学芸大学, 次世代教育研究センター, 教授 (40334461)
八木 美保子 東邦大学, 理学部, 講師 (50460035)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 教員養成 / 教育学 / 教師の専門性 / 国際比較 / 専門性 / 省察的実践家 / わざ |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研の2019年度は、科研の初年度として、文献調査、フィールド調査、インタビュー調査、研究会の実施を行った。 国外での調査は、2019年5月に、アメリカのボストン及びニューヨーク市における進歩主義学校を訪問し、教育学としての進歩主義教育と、それを実践する学校で「教える」専門家として働く教員養成との間の関係性についてインタビュー及び調査を実施した。また、J.R.Martin氏にインタビューを行い、Little Red School Houseの教育理論及び教員養成に関する知見を得るとともに、同氏の著作翻訳に関する打ち合わせを行った。2019年9月には、台湾の台北市において国立台湾師範大学、台中市において國立台中教育大學を訪問し、各大学の教育哲学・教育思想を専門とする教授陣へのインタビュー調査及び研究会を実施した。台湾と日本の教員養成における教育学の位置づけや機能について比較材料を収集し、「教える」専門家の育成に関する哲学的・歴史的な見地からの知見を得た。 国内調査は、東京シューレ葛飾中学校、東京サドベリースクールでのインタビュー調査をそれぞれ実施した。和歌山県のきのくに子どもの村学園での調査では保育課程の教員養成に関する調査を実施した。 以上の研究調査結果を分析し、成果の一部を雑誌論文2件(うち査読付論文1件)、学会発表4件(うち国際学会3件、吉國陽一、“Understanding the role of play in children’s development: Development as states that are essentially by-products”等)、図書5件(生田久美子・安村清美編著、犬塚典子ほか著、北樹出版『「子ども人間学」という思想と実践』、2020年等)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において、2019年度は「国内外の文献研究,理論的枠組みの検討,予備調査の実施」を行う期間として想定されていた。これに対して、文献調査を進めることにより、「教える」専門家の養成に関する学びが実践されている場面の分析、教員養成の歴史的・制度的変遷に関する基本調査を実施することができた。また、フィールド調査については、本科研全体のフィール調査を一貫して行うためのフレーミングとして、対象者の選定、インタビュー内容の確定、インタビュー方法の検討、及び特定の対象者に対する予備調査を実施し、その結果、アメリカ、台湾、イタリア、イギリス、モンゴル等における研究調査計画の具体化がすすめられた。 さらに、台湾では国立台湾師範大学において黄嘉莉氏、李奉儒氏、楊深坑氏、黄柏叡氏、国立台中教育大学において陳盛賢氏、陳延興氏、楊銀興氏、楊思偉氏という同国の教員養成の中核に携わる方々にインタビュー調査を実施し、同国における最新の教員養成の現状を調査することができた。またイギリスの調査計画について、カンタベリー・クライストチャーチ大学の教員の方に紙面における質問を実施し回答を得られた。 一方で、新型コロナウィルス感染症拡大のために、調査活動の一部変更が生じた。2月~3月に予定されていたイタリアのボローニャ大学での調査及び研究会は同国での感染拡大状況を鑑み、2020年度に延期した。同様に、イギリスのカンタベリー・クライストチャーチ大学、サマーヒル・スクールの調査計画についても延期を余儀なくされた。これらの延期された研究計画については、新型コロナウィルス感染症の対策状況に応じて、適宜かつ迅速に研究計画の実施を講じる予定である。今後の調査、研究会等の計画については、研究対象者のすべてと随時交渉を進めることができている。 以上のことから、本科研の研究計画は、おおむね計画どおりに進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、当初の研究計画では「「教える」専門家養成実践・調査及び分析」の期間であり、文献調査及び先行研究分析で明らかになった知見や理論的背景を踏まえて、「教える」専門家の育成に関する実践の調査及び分析に関する横断的研究(異文化間比較研究・国際比較研究)を実施することを想定している。実際には、前述の通り2019年の段階でいくつかの実践に関する調査を行うことができ、その結果に基づきながら、さらに「教える」専門家としての教員を要請する理論・実践の分析を進めることを予定する。 主な研究計画は、2019年度に新型コロナウィルス感染症拡大の影響のために延期となったイタリア、ボローニャ大学における教員養成に関する調査及び研究会の実施、イギリス、サマーヒルスクールにおける教育理論・実践に関する訪問調査である。これと並行して国内での調査についても随時継続していく。 しかしながら、上記の研究計画を遂行するためには、新型コロナウィルス感染症への対策が急務である。同感染症の状況に応じて、安全かつ質の高い調査を実施することを第一に考え、調査時期、方法等を精査していく。直接的な接触を伴わない現職の教員に対するインタビュー調査の実施等を適宜進めていく。
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