2020 Fiscal Year Annual Research Report
保育所等における生活困難家庭に対する組織的支援と実践理論の構築
Project/Area Number |
19H01651
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中谷 奈津子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (00440644)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関川 芳孝 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (10206625)
吉田 直哉 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (70626647)
鶴 宏史 武庫川女子大学, 教育学部, 教授 (80411932)
木曽 陽子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (80735209)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保育所等 / 生活困難 / 家庭支援 / 保護者支援 / 子育て支援 / 組織的対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生活課題の早期発見後の介入方法、組織内での合意形成や意思決定プロセスに関する組織体制の質的把握、不十分な家庭養育に対する補完・補償の方法の提示、イギリスにおける研修システムと支援体制の把握を行うとともに、本研究チームがこれまで明らかにしてきた知見を整理し、生活困難家庭に対する保育所等における組織的支援に関する実践理論を提示することを目的とする。 当該年度においては、積極的に生活困難家庭への支援を行っている保育所等へのインタビューをもとに,学会発表及び論文執筆を行った。保育所等における生活困難家庭に対する介入のプロセスを明らかにするために、MーGTAによる分析を行った。生活困難家庭への支援プロセスは、担任等が些細な異変に気づくことから始まっていた。その後の介入レベルの判断やさらなる介入の実施は管理職が実施しており、担任等と管理職の役割が明確であることがわかった。介入の判断には、子どもへの影響と保護者の状況や思いも関連していたが、最終的に介入の程度を決めるのは、「異変」がどれほど子どもの命にかかわるかという点であった。また管理職が介入をする場合には曖昧にするのではなく、はっきりと異変を話題にしており、ある一定覚悟を持って保護者と対峙していることがうかがえた。 また、園における子ども家庭支援についての恒常的、複層的な情報共有は、組織全体に子どもと家庭に関する基本的情報の浸透を促し、それは何か対応すべき事柄が発生した際の基盤として機能していることがうかがえた。家庭の異変が察知された後は、関係者間での非公式的な情報共有が主流となっていたが、それら一連の情報共有を支える要因として、職員同士のつながりや子ども家庭支援に関する園の方針の浸透がみられた。 本分析で得られた知見は、保育施設における子ども家庭支援のための組織改善にとって重要な手がかりになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
インタビュー調査の練り直しが必要となったことや新型コロナの感染症の影響でインタビュー調査の実施を延期している。海外視察を検討していたが、実施についてはいまだ不透明である
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Strategy for Future Research Activity |
現在、2021年度までに実施したインタビュー調査(第1弾)の分析を行い、順次、論文投稿を行っている。またインタビュー調査(第2弾)での結果については国内の学会での発表を予定しており、その後、論文執筆につなげる予定である。2022年度には、延期していたインタビュー調査(第3弾)を実施する予定であり、保育所等組織における家庭支援に関する意識改革のプロセスについて明らかにしていく。また、質的データの分析を主とした本研究での論稿が蓄積されてきているため、研究成果を広く発信するために、次の学術書の出版を企画する。 イギリスのセーフガーディングプログラムの検討については、新型コロナ感染症の影響から、海外調査がいつ可能となるのか未定であるため、現時点では保留のままとする。
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