2020 Fiscal Year Annual Research Report
Processing Strategy of Visual Non-Verbal Cognitive Task of Deaf Learners
Project/Area Number |
19H01697
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鄭 仁豪 筑波大学, 人間系, 教授 (80265529)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 視覚的知覚 / 視覚的イメージ / メンタルローテーション / 聴覚障害者 / 視覚的方略 / コミュニケーション手段 / 言語力 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度(2020年度)の研究では、聴覚障害者の視覚的非言語性認知課題の処理方略を、視覚的知覚課題である視覚的イメージ課題(単純配列提示課題・インパクト提示課題)とメンタルローテーション課題(難易度高・難易度低) を用いて、コミュニケーション手段(口話優位・手話優位)と言語力(言語力高・言語力低)の側面から、課題の処理方略と特徴について検討した。 対象者は、特別支援学校(聴覚障害)高等部および専攻科生徒22名(裸耳の平均聴力レベル99.5dB)で、口話優位言語力高群7名、口話優位言語力低群6名、手話優位言語力高群3名、手話優位言語力低群67名の4群に分けられた。実験課題は、60㎝距離のディスプレ上に提示され、課題遂行中の眼球運動が非接触型眼球運動装置(Tobii Proスペクトラム)により測定された。 分析は、各課題における正再生率または正答率と眼球運動(注視点数・総注視時間・平均注視時間・刺激参照回数)が分析された。 研究の結果、視覚的イメージ課題では、課題が非言語性課題ではあるものの命名可能な課題であったため、言語力による違いが示され、言語力高群が言語を用いて効率よく記憶している方略の違いが見られた。なお、コミュニケーション手段による差は示されなかった。メンタローテーション課題では、言語力やコミュニケーション手段による差が示されなかったが、メンタルローテーションの方略として、90°以上の回転を必要とする課題においては、90°を軸に2回の回転を行う回転方略が窺えた。また、眼球運動の分析からは、いずれの言語力においても、口話優位群が注視点数や参照回数が多く、総注視時間や平均注視時間が長い傾向が示された。 このことから、聴覚障害者の視覚的知覚課題では、課題の特性による言語力影響が示唆されること、また、コミュニケーション手段による解決方略の違いが特徴として考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、聴覚障害者の視覚的非言語性認知課題の処理方略について、言語モードと言語力の側面から、明らかにする研究である。 2019年の研究においては、聴覚障害者の視覚的注視の方略と特徴を、選択的注意課題と周辺視課題より検討し、コミュニケーションモードや言語力による違いは示されないことを明らかにした。2020年の研究においては、聴覚障害者の視覚的知覚の方略と特徴を、視覚的イメージ課題とメンタルローテーション課題により検討し、命名可能な視覚的メージ課題においては言語力が働くこと、しかしメンタルローテーション課題においては、コミュニケーションモードや言語力の差が示されないことが明らかになった。 昨今、コロナの影響を受け、教育現場での協力を得ることが難しくなった側面はあるものの、ここ2年間の研究においては、研究協力機関との調整の上、予定を少し変更しながらデータを収集するなどの工夫を行い、概ね計画通りの研究を実施しており、研究全般においては概ね順調に実施されていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、聴覚障害者の視覚的非言語性認知課題の処理方略について、言語モードと言語力の側面から、明らかにする研究である。 次年度以降、2021年の研究では、視覚的記憶の方略をWM理論の枠組みの視空間スケッチパットの働きに着目し、PST(Picture Span Test)とCBT(Corsi Block Test)により測定し、コミュニケーションモードと言語力による相違を検討すること、2022年には,視覚的問題解決の方略と特徴を調べるため、4コマ絵物語課題を用いて、コミュニケーションモードと言語力の相違を検討することを計画している。2023年には、これまでの4ヵ年間の研究成果をまとめるとともに、その研究成果を学習場面等に利用する可能性について、教育現場の教員を対象に、意見を徴収し、本研究の知見を教育現場に還元できる可能性について検討する計画である。 昨今、コロナの影響を受け、教育現場での協力を得ることが難しくなった側面はあるものの、今後の研究においては、協力機関との調整の上、コロナの影響を最小限に留める形で、実施していく予定である。
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