2020 Fiscal Year Annual Research Report
Educational Innovation of College Physics through Development and Implementation of Japanese-style Active Learning Pedagogy
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19H01711
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
土佐 幸子 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (40720959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 昭三 新潟大学, 人文社会科学系, 名誉教授 (10018822)
伊藤 克美 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (50242392)
中野 博章 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60262424)
植松 晴子 (小松晴子) 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70225572)
中村 琢 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70377943)
山田 吉英 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (30588570)
谷口 和成 京都教育大学, 教育学部, 教授 (90319377)
梅田 貴士 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (40451679)
岸本 功 山陽小野田市立山口東京理科大学, 共通教育センター, 准教授 (60399433)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大学物理講義 / レッスンスタディ / アクティブ・ラーニング / 日本式AL型教授法開発 / 大学教員の支援体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大学物理講義をアクティブ・ラーニング(AL)型に変革する物理教育改革を全国的に波及させるために次の3点を目的とする。 ①7大学で日本式AL型物理教授法を開発(R1~R3年)、継続的実践を通して効果検証(R3~R5年)。 ②レッスンスタディ(授業研究)による協同的な教員支援体制の構築(R1~R5年)、教員にもたらす効果の解明(R3~R5年) ③日米研究者によるシンポジウム等の開催、全国的ネットワーク構築(R1~R5年)、得られた知見を世界へ発信(R4~R5年) R1年度末には、2月に発生した新型コロナウイルス感染拡大により、計画していた3月のシンポジウム開催と米国大学訪問は中止せざるを得なかった。そこでR2年4月初めにオンラインで打合せを行い、遠隔で講義が行われているのを逆に利用して、メンバーが実際に授業に参加するレッスンスタディを行うことにした。広島大、東京学芸大、岐阜大、新潟大の講義について、「事前協議、参観、事後協議」を1セットとするレッスンスタディを7回行った。居ながらにして、学生の学びや困難に直に触れながら指導法や教材を検討するという画期的な活動を展開した。岐阜大における講義(受講者37名)のFCI規格化ゲインは0.55という高水準を示し、効果的な授業であったことがわかる。さらに米国ラトガース大の遠隔講義に2名が参加し、物理教員養成用指導法について大きな示唆を得ることができた。3月にはオンラインでシンポジウムを開催し(37名参加)、講演及びビデオ授業視聴によるレッスンスタディを行った。アンケートでは24名の回答者全員が「とても有益だった」と答えた。さらに3月の日本物理学会第76回年次会(オンライン開催)では反転授業についてチュートリアル講演を開催し(68名参加)、ALの1形態について広く情報を発信することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように、コロナ禍の中、現地に赴いて対面で授業参観や協議を行うことが難しくなったが、その代わりにオンライン・コミュニケーションを最大限に活用し、新潟、福井、東京、岐阜、京都、広島、山口を結んでレッスンスタディを行うことができた。今までは研究代表者と授業者が協議する形であったが、R2年度の協議には多くのメンバーが参加し、多面的に、しかも頻繁に協議できたのは画期的だった。教員が正解を述べるのではなく、学生に本質的な理解を促す手立て(学生同士を深く話し合わせるための発問の仕方、TAの働きかけ方など)について、多くの議論の時間が割かれた。オンラインによるレッスンスタディは、非常に有効な教員研修形態であることがわかったのは大きな収穫である。コロナ後も、所在地によらずオンラインでレッスンスタディを行うことにより、物理授業改革を進めることができる希望が見えた。 新潟大学理学部で実践されている反転授業について、日本物理学会のチュートリアル講演で発信することを土佐が提案し、R3年3月に実現した。68名の参加者には、物理教育関係者ばかりでなく、物理の専門教員も含まれる。質疑応答では時間を30分延長するほど熱心な発言が挙がった。反転授業というAL型指導法の1つの形態について、目的③の全国的な発信ができたのは大きな成果である。しかも、講演者の大野義章教授は研究メンバーではなく、物性理論研究を専門とする教員である。この講演はメンバーの枠を越えてAL型指導法が広まったことを意味する。 R2年に中止した米国ラトガース大エトキナ教授の講義参観を、オンラインで実施できたことも大きな成果である。参観を通して、日本ではまだ整備されていない教員養成用物理カリキュラムの必要性を強く感じた。理系学生向け日本式AL型物理教授法の開発と並行して、教員養成用カリキュラムの開発を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
①日本式AL型物理教授法書籍の出版:日本式AL型物理教授法の開発は各大学で終了し、実践を通して洗練している状況である。そこで、指導法の発信を行うため、書籍出版の道を探っているが、あまり進行していない。R2年5月に知り合いの出版社に相談したが、企画会議まで行きながら、指導法に関する書籍の出版は利益が見込まれないということで企画は通らなかった。その後、何人かの知人に相談しているが、可能性は見出されていない。書籍というまとまった形で、日本式AL型物理教授法を広めたいという希望は変わらない。可能性を模索する活動を継続することと同時に、PDF版で発信することも視野に入れて準備を進めたい。大学教員の実践を促すために、書籍には学生の困難な点や実践者の苦労など、具体的なエピソードを含めたいと考えている。手始めとして、エピソードをメンバー同士で報告し合い、議論する。 ②レッスンスタディ研究会の開催:3月のシンポジウムでレッスンスタディの有効性について、参加者から多くのポジティブな意見が寄せられた。全国から参加者を募るレッスンスタディ研究会を、6月、9月、12月、3月の年4回行うことを計画する。 ③教員の意識調査アンケート:対象を拡大して実施し、レッスンスタディの効果を調査する。R2年度はメンバー以外を対象として実施することが難しかった。シンポジウムや研究会参加者などに広く呼びかけて、サンプル数を増やしたい。 ④メンバーによるレッスンスタディと授業参観の充実:オンライン利用により、頻繁に、しかも気軽に授業検討を複数で行うことができる体制を確立する。
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