2021 Fiscal Year Annual Research Report
小中学校において実施可能な体系化された安全・防犯教育カリキュラムの開発
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19H01713
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
岸 俊行 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (10454084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 将史 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (20568498)
稲垣 良介 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 教授 (20583058)
鶴田 利郎 国際医療福祉大学, 小田原保健医療学部, 講師 (20735352)
大久保 智生 香川大学, 教育学部, 准教授 (30432777)
杉山 晋平 天理大学, 人間学部, 准教授 (30611769)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 安全教育 / 水難事故防止 / ネット犯罪 / サイバー防犯教育 / 虐待研究 / 実践研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、様々な領域の安全教育に携わる専門家による相互実践を行うことによって、安全教育カリキュラムの体系化を目指すことを目的として研究を進めている。研究3年目である2021年度には、主に日本および諸外国で行われている安全・防犯教育に関わる事例収集・データベースの作成および、安全・防犯教育に関わる実践研究を行う予定であった。しかし、コロナウイルス感染症の影響により、実践研究に関しては当初予定していた実践を様々な制約状況の中で行った。具体的に本年度行った主な実績として下記の3点が挙げられる。 1.日本および諸外国の学校現場で行われている安全・防犯教育の事例収集およびデータベース化を行ってきた。安全教育・防犯教育はこれまでは、それぞれ内容ごと(交通安全,水難事故防止,中毒,犯罪,虐待等々)にばらばらに検討、事例取集されてきた。また、学校現場での安全・防犯教育に関しての国際比較に関するデータはほとんど存在しない。そのような観点から、体系的な安全教育プログラムの構築において、非常に意義のある実績といえる。 2.防犯教育の一環として、作成された万引き防止防犯アプリを実際に使った検証実験を行った。これまでもハザードマップや交通安全等の防災教育に関してはアプリを用いた教育実践が行われてきているが、防犯教育の領域においての教育実践への応用はほとんど例がなく、実際の防犯教育実施に向けた効果測定の実践およびデータ収集は非常に意義のある実績であるといえる。 3.本研究の一環として作成したイラスト中心の小中学生向けサイバー犯罪防止教材を、福井県内の全公立学校に配布を行い、実際の教育現場での実践を行った。研究で作成された教材が県内のすべての公立学校に導入されるということは例を見ないことであり、それを用いた公立学校での実践を行ったことは本研究における特徴的な取り組みといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究3年目にあたる2021年度の研究計画は、以下の3つを推進することであった。一つは我が国および諸外国の学校現場で行われている安全教育の現状把握、二つは安全・防犯カリキュラムの開発及び実践、三つはインシデントに対する人の心理学的特徴の解明である。 2020年度までに行った安全教育に関する教科書作成に向けた基礎資料の作成及びデータ収集と虐待事案にかかるデータベースの作成に追加する形で、我が国における学校現場での安全教育の事例のデータベース化、および諸外国での安全教育の実例の取集を行ってきた。二つ目の安全・防犯カリキュラムの開発・実践に関しては、コロナウイルス感染症の影響を受け、万全な状況での開発研究を行えていない。それでも水難事故防止教育に関しては、ソーシャルディスタンスを保つ、マスクを必ずつける、人数を制限する等の制約下の下で、実践を行ってきた。具体的には水難事故防止教育では、2020年度には実施できなかった河川での実践を、人数を制限した制約的状況下で行った。またサイバー犯罪防止教育においては、開発した小中学生向け教科書を用いた実践を計画していたが、コロナウイルス感染症のため、直接的な実践を行うことができず、福井県内の各小中学校に教材を配布し、実際に学校の裁量で利用するという形態で実践を行った。防犯教育の一環として行った万引き防止教育においては、アプリの開発を行い、大学生がそれを利用するという形での効果測定を行った。当初計画の3つ目である、インシデントに対する人の心理学的特徴の検討も、制限化の実践ではあるが、水難事故防止教育に参加した生徒のデータ分析、サイバー犯罪防止教育の教材を利用した子どもへのインタビュー、万引き防止アプリを利用した学生のデータ分析を行ってきた。 コロナウイルス感染症による制限があるものの、当初の予定に限りなく近い状況で研究は推進されていると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度になる2022年度は、昨年度、制限状況下で行われた子ども達に対する安全・防犯教育の実践を継続的に行い、3年間で蓄積してきた安全・防犯教育に関する事例(事案)・データの分析を行っていく予定である。また、最終年度ということでデータの公開、研究知見の公表も併せて行っていく予定である。具体的には、以下の3観点に対して6つのフェーズで研究を展開していく予定である。 【実践に関して】1.水難事故防止教育に関しては、昨年度に引き続き、実際の河川を利用した実践を行う。その際に「事前事後指導を行うことによって水域での安全意識が一般化しうる」という研究仮説の検証を行う。2.昨年度大学生を対象に実施した万引き防犯アプリを利用した実践を、学校現場で行うことによって、カリキュラムの構築へとつなげる効果測定を行う。3.サイバー防犯教育に関しては、一昨年作成した、子どもを対象としたサイバー防犯に関わる教科書「NetWalker」を利用した防犯アプリの作成とそれを用いた実践を行う予定である。また年度末(2月)には、ネットに関連する専門家を招き、福井県内の親子を対象としたネット安全に関するワークショップを実施する予定である。 【事案・データの分析に関して】これまでに行ってきた、水難事故防止教育,サイバー犯罪防止教育,万引き防止教育の実践と効果測定によって得られたデータに基づき、防犯・防災教育において共通する要素の抽出を試みる。 【知見のまとめと公表】1.4年間の研究成果を、水難事故防止教育、サイバー犯罪防止教育、万引き防止教育の3つの観点でまとめて公表するWebサイトを構築するとともに、3月にそれぞれの研究者をシンポジストとしたシンポジウムの開催を行う。2.研究最終年度であるため、本研究で得られた知見をまとめた報告書を作成するとともに、小中学生を対象とした教材アプリを作成公開する。
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Research Products
(27 results)