2019 Fiscal Year Annual Research Report
概念形成過程の実践的研究と一体化した物理概念調査紙群の開発
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19H01731
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
新田 英雄 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50198529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石本 美智 高知工科大学, 共通教育教室, 准教授 (40299368)
植松 晴子 (小松晴子) 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70225572)
右近 修治 東京都市大学, 共通教育部, 教授 (60735629)
安田 淳一郎 山形大学, 学士課程基盤教育機構, 准教授 (00402446)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 概念調査紙 / 素朴概念 / 授業評価 / Raschモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,高等学校および大学初年次相当における物理学習者の概念形成過程を,物理教育研究の成果を取り入れた授業を通じて実践的に研究するとともに,実践研究と一体化した方式で,日本の教育課程に適合する新たな概念調査紙群を開発することを目的としている。具体的には,以下の3点を目標としている。①多様な高等学校および大学の研究協力者・研究分担者による授業実践の中で,物理教育研究で確立された手法を用いて概念形成過程を調査し,多くの生徒・学生が共有する素朴概念を高校物理全単元について明らかにして分類すること。②調査で明らかになった学習者の素朴概念及び概念形成過程に基づいて新たな概念調査紙の設問項目を作成し,授業実践でのフィードバックを取り入れながら新たな調査紙の精度を高めていくこと。③作成と分析には現代テスト理論を用い,母集団や設問項目が変化しても同一尺度での比較を可能とする学習者の概念理解度および設問項目難易度の指標を確立し,長期にわたって標準的に利用できる教育資源を構築することにより,物理教育の永続的な改善と発展に貢献することを目指すこと。 2019年度の研究業績の概要は以下の通りである。①については,素朴概念分類表の素案を作成した。②については,2019年度の目標として高等学校「物理基礎」の概念調査紙の基本セットの作成,および高等学校「物理」においていくつかの設問(主に力学)を作成することを目指した。設問の作成過程にはPERで確立している手法,すなわち作成した設問には理由を記述させ,設問の意図および選択肢の意図が正しく反映されているか,偽正答,偽誤答が含まれないかを詳細に検討し,そのフィードバックにより設問を改善していった。③についてはRaschモデルの検討を研究会で行った。研究成果については日本物理学会,日本物理教育学会で口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は素朴概念分類表の素案の作成,高等学校「物理基礎」の概念調査紙の原案作成,および高等学校物理のいくつかの問題(主に力学)の試作と実施を予定したが,それらを概ね遂行した。したがって,本研究課題の進捗状況は順調であると自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究において,「基礎物理」に対する調査紙の基本セットを試作することができた。本年度以降はそれをもとに調査を行い,「基礎物理」 調査紙の改良を行う。また,IRTによる分析を視野に入れ,設問を増やし,基本セットと入れ替えて試行する。試行による設問項目の妥当性評価は,昨年度と同様に次の(i)~(iii)の手順で行う。(i)授業において調査を試行し,選択肢の選択理由を記述させる。(ii)回答選択肢と選択理由を詳細 に分析し,設問と回答選択肢が意図したように機能しているかを検討する。特に,誤った理由で正答を選んでいないか(偽正答),正答できる 生徒が問題を誤って解釈したために誤答を選んでいないか(偽誤答)を吟味し,選択肢の妥当性を調べる。(iii)設問の妥当性が確認されるまで(i)と(ii)のループを繰り返す。必要に応じて,設問項目の妥当性を面接調査によって確認する。この設問の作成と妥当性を検証する作業は,昨年度に引き続き,研究協力者を小グループに分けて分担を決めて集中的に行う。開発する設問項目は単元当たり約40項目の項目プール を揃えることを目標とする。単元ごとの調査紙は20項目を目途に冊子とするが,適正数は項目困難度に基づいて定める。次に,「物理」の調査紙を試作する。設問項目の妥当性評価は「物理基礎」と同様に行う。また,研究分担者,研究協力者による研究会を定 期的に開き,試行結果の分析と設問の検討を行う。なお,本年度はCOVID-19の影響により,残念ながら春の事前調査が不十分となり,事前事後調査データが不完全となってきており,今後も調査に支障がでることが予想される。その場合,問題項目の開発に力点を置いて研究を遂行する。
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Research Products
(9 results)