2020 Fiscal Year Annual Research Report
Building the groundwork for social psychology: Meta-analyses of unpublished studies in Japan and direct replications
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19H01750
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
平石 界 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (50343108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 麻子 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (30273569)
樋口 匡貴 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (60352093)
藤島 喜嗣 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (80349125)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会心理学 / 心理学の再現性 / メタ分析 / 公刊バイアス / 追試 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度に定めたコーディング基準に則り、日本社会心理学会ならびに日本心理学会の大会論文で報告されている統計量の調査を行った結果、各論文ごとに報告される情報が大きく異なることが明らかとなった。そこでほぼ全ての大会論文で報告されているp値を用いて、統計的に有意な結果ばかりが選択的に報告される公刊バイアスが生じていないか、p-curve分析ならびにz-curve分析を実施することを決定し、そのためのコーディング基準をPRISMAフォーマットに準ずる形で作成し公開した(Hiraishi et al. 2021)。 2019年度末に始まったCOVID-19パンデミックの機会を捉え、感染症と嫌悪感情、道徳、そして内外集団への態度の関連を論じる行動免疫仮説について、先行研究の直接的ならびに概念的追試を進めた。具体的には、日米英伊中の5カ国における国際比較データの収集、日本国内におけるパネル調査による経時的変化データを収集した。現時点での分析結果を日本社会心理学会等で報告した(平石ら, 2020など)。 パンデミックという世界的災害は、再現性に問題を抱える心理学がどのような形で社会にその知見を還元することができるのか、心理学の測定、理論、一般化可能性についての議論が活性化した。これらの議論をフォローし、さらに信頼性の高い研究を行う方法を確立するためのオンラインの公開ジャーナルクラブ(ReproducibiliTea Tokyo)を企画し、1年を通じて全国各地の研究者を集めた議論を進めた。その成果の一部をブログ形式で発表した。また、既存の質問紙尺度の妥当性の検討(藤島ら, 2020)、再現性問題を踏まえた個別テーマのレビューも進めた(山本・樋口, 2020)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年、心理学では知見の一般化可能性が過大視されてきた恐れがあることが指摘されている。つまり知見を異なる状況で繰り返し確認する(追試する)必要性がある。こうした観点から、すでに国内外における概念的・直接的追試によって頑健と報告されている現象(適応的記憶)を敢えて選択し、先行研究の数倍のサイズのサンプルからなる大規模な追試を4つの研究室からなるマルチラボで実施した。 メタ分析については、日本社会心理学会ならびに日本心理学会の大会報告について、どのような手法の研究が報告され、どのような統計量が記載されているのか基本的な調査が完了した。その結果、社会心理学研究に限定してもなお、報告内容の多様性が極めて大きいことが明らかとなった。そこで、ほぼ全ての大会論文で報告されるp値を用いたメタ分析を実施し、査読によるリジェクトの可能性がほぼない状況においてなお、統計的に有意な結果が選択的に報告されやすい公刊バイアスが生じているか検討することとした。系統的レビューにのためのプロトコルをPRISMAに準拠して作成し公開し、プロトコルに基づいたコーディングを実施中である。 COVID-19パンデミックは、感染症と感情、道徳、そして内外集団の関連を論じる行動免疫システム仮説を、感染症拡大下という、仮説との直接的関連性を持つ状況で検証する機会を与えるものでもあった。日米英伊中の5カ国でWeb調査から国際比較データを収集する他、国内でのパネル調査による経時的変化データを収集し、分析結果の一部を学会やプレプリントで報告した。 COVID-19パンデミックによって対面で行う実験室実験が実施できない等の問題も生じたが、他方で全国の研究者をオンラインで結ぶ形の学術コミュニティを立ち上げ、議論と研究を進展させることもできた。以上から全体として、概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
作成したプロトコルに従って日本社会心理学会ならびに日本心理学会の大会論文で報告されている統計量のコーディングを完成させ、そのデータを用いた統計的メタ分析を実施する。また、前年度までに抽出した大会発表論文のテキストに対して計量的テキスト分析を行い、各論文のカテゴリー分けを行う。大会発表論文で報告されている統計量の情報と掛け合わせることで、国内の社会心理学会における研究報告の特徴を明らかにし、知見の蓄積が豊富で、かつ質も高い研究テーマを明らかにし、短報として報告する。その上で、本研究でメタ分析を実施する対象テーマを選別し、統計的メタ分析のための研究計画を設定する。既に実施してきた追試研究について、追加データの収集ならびに論文発表を進める。具体的には適応的記憶、宗教プライミング、向社会性の進化心理学、行動免疫仮説などにかんする追試を、Japanese Psychological Research, Evolutionary Psychologyなどの雑誌に投稿する予定である。再現性危機の認識から約10年を経た現状についての解説論文を「科学哲学」誌に寄稿するほか、日本心理学会、日本社会心理学会、日本教育心理学会などにおいて再現性問題ならびにオープンサイエンスについてのシンポジウム等を開催する。
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Research Products
(10 results)