2019 Fiscal Year Annual Research Report
他者の意図と感情の理解:進化における相同を類人猿に、相似をカラスに探る
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19H01772
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
狩野 文浩 京都大学, 高等研究院, 特定准教授 (70739565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山梨 裕美 京都市動物園, 生き物・学び・研究センター, 主席研究員 (80726620)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 類人猿 / カラス / 心の理論 / 共感 / 視線 / モーショントラッキング |
Outline of Annual Research Achievements |
類人猿を対象に行った研究では、類人猿の心の理論(他者の心的状態の理解)と、共感(他者の感情に対する反応)について、成果を上げた。心の理論課題では、先行研究における、類人猿を対象とした予測的注視を指標にした誤信念課題において明らかではなかった点をさらに詳しく検証した。具体的には、類人猿が他者の意図理解にもとづいて課題を解決したのか(心の理論)、他者が最後に見た場所を再訪する、というような、特定の「行動ルール」にもとづいて課題を解決したのか、検証を行った。この「行動ルール」仮説を検証するために、本研究では、類人猿が、他者が同一の行動をしている状況においても、自己の経験に照らし合わせて、他者の行動の予測のやり方を変化させるかしらべた。結果、肯定的な結果を得た。共感を調べた課題では、類人猿に実験者がケガをした状況において(ケガのメイクアップを見せて、血のりを流した)、類人猿がどのような行動と生理反応を示すか調べた。生理反応を調べるために、サーモ・イメージングによって、鼻の皮膚温度変化をしらべた(ストレスを感じると交感神経が賦活し、温度が低下する)。類人猿は、実験者のケガをみたときに、実験者に接近し、鼻の皮膚温度を低下させた。類人猿の共感を実験的に示した。 カラスを対象にした研究では、複数台の赤外線カメラをそなえたモーショントラッキングルームを自作した。予備的な実験として、軽量のトラッカーボールをカラスの頭の上に乗せたときに、頭の動きを3次元的に撮影することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、類人猿を対象に、アイ・トラッキングにより、視線を指標に用いた実験的研究において成果を上げ(米誌PNASに掲載)、また、サーモ・イメージングにより、皮膚体表温度を指標に用いた実験的研究においても成果を上げた(独紙Animal Cognition)に掲載。 また、カラスのためのモーショントラッキングルームを自作した。カラスを対象にしたモーショントラッキングとしては世界初の試みとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
類人猿を対象にした心の理論研究では、心的メカニズムに関するさらなる研究を進める。また、共感に関する研究では、当該年度は6個体のチンパンジーを対象にしたため、個体差について詳しく分析することができなかったが、より多くのチンパンジーを対象に、共感(らしい行動と生理反応)に関係する行動傾向について理解を深める。 カラスを対象にした研究では、モーショントラッキングを用いて、カラスの視線について研究を進める。まず、鳥は正面向きだけではなく横向きの視線を持つため、鳥が特定の対象を注視するためにどのように視線を用いるか調べる。次に、個体間相互作用において、カラスが視線をどのように用いるか研究を進める。
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Research Products
(7 results)