2020 Fiscal Year Annual Research Report
「畏敬」の心理・生物学的基盤とその効用に関する構成論的研究
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19H01773
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 理朗 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (60399011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Rappleye Jeremy 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (00742321)
池埜 聡 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (10319816)
高橋 英之 大阪大学, 基礎工学研究科, 特任講師(常勤) (30535084)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 畏敬 / 自然 / 人工物 / 東洋思想 / 深層学習 / マインドフルネス |
Outline of Annual Research Achievements |
1.畏敬と自己所有感の関連について検討した。もとよりsmall-selfと呼ばれるように畏敬の念の喚起にともなって、自身をよりちっぽけに感じられるようになること、加えて、統合失調症は自他関係の分水嶺が曖昧となることなどをふまえて、畏敬の念と自己身体感覚の関連を仮説し、検討した。結果、畏敬がゴムの手に対する身体所有感を高め、よりsmall-selfへと導かれた個人においてその傾向が顕著となることを明らかにした。 2. 米国から数カ国に広がる青少年対象のマインドフルネス・リトリート・プログラム、Inward Bound Mindfulness Education(iBme)の構成要素(歴史経緯、思想背景、実践理論、実践方法、効果検証)について、文献資料レビュー及び実践者への直接インタビュー(オンライン)からデータ収集を完了。人種やセクシュアリティなどマイノリティとしての苦悩かかえる青少年を対象にしたiBmeは、さまざまな対象への畏敬に通じる社会的包摂の価値を体現化しており、臨床技法としてのマインドフルネスとの比較例証が可能な状況となった。 3.畏敬と審美感情との関連 畏敬の念が、詩歌に内包される審美性と以下に関わるのか23句の俳句を用いて検討した。267名の参加者に俳句の感情価,感情評定,畏敬,ノスタルジア,俳句の美的評価を含む10の観点からの評価を求めた結果,感情が美的評価に及ぼす畏敬の媒介効果が,ネガティブな感情を内包する俳句において確認された。 執筆中
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内各誌(心理学研究等)をはじめ、国際学術雑誌においては、Emotion、Frontiers in Psychology等への採択・掲載、各種学会シンポジウムの開催などを通じて、畏敬に関わる国内の研究基盤の確立した。
また新たに得られた研究成果(上記項目1~3)に示すとおり、無心にかかわる実験・調査研究を実施し、成果を得ることができた。また、コロナウイルスの感染拡大状況を受けて、実験室実験の実施を断念せねばならない状況が一定期間あったものの、そこにおいてはウェブ上での調査や実験へと、これを柔軟に調整することにより、一定の成果を得ることができた。 とくに、インタビュー・データは逐語録化を完了し、資料データとともに質的データ分析ソフトMAXQDAにて、カテゴリー分析を継続中である。現在オープン・コーディングまで終了している
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Strategy for Future Research Activity |
以下の研究1,2を継続、また研究3,4に着手する。 研究1: 実験参加者:健常成人 80名 脳の撮像:はじめに脳の構造を撮像し,続いて畏敬等の映像視聴中の脳活動を核磁気共鳴脳画像法(MRI: Magnetic Resonance Imaging)により撮像し,関与が予測される扁桃体,前頭眼窩野等を仮説領域とし,脳の構造・血行動態と課題の反応選択等の行動出力との関連を検討する 研究2:人工物に対する”畏敬の念”の定量評価:方法:調査対象:健常成人1,000名 手続き:開発した心理評定尺度を用い,各対象(神・鳥居/ロボット・シャーマン/赤ちゃん・犬等)をオンライン調査により評価。畏敬との関連が予測される15種程度の心理評定尺度(気質5因子,文化的自己観,認知的完結欲求等)の調査・得点化したデータを基に妥当性評価。また実験室実験として,実際のロボットに接した際の評定結果,それらの対象に対する非言語行動(視線,姿勢,表情等)の関連を明らかにする。 研究3:上記のiBmeに関するデータ分析の完了と論文化を2021年度中に行う予定。論文投稿先は、日本マインドフルネス学会発刊の『マインドフルネス研究』を検討している。 研究4:人工物(ロボット)に対する畏敬の念への影響因子の検討:方法:実験参加者:健常成人 50名 ロボットに対する“畏敬の念”に及ぼす状況要因(ロボットの未来予測的な言動,人間離れした計算能力,第三者が畏敬の念を示している状況を観察したかどうか等)を検討,人間が対象に対して畏敬を感じるメカニズムを構成論的に解明する。
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Research Products
(10 results)