2019 Fiscal Year Annual Research Report
予測誤差の可視化による自己感への貢献:行動・計算論・脳機能計測の統合
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19H01777
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Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
浅井 智久 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究員 (50712014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門田 宏 高知工科大学, 情報学群, 准教授 (00415366)
今水 寛 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30395123)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自己感 / 脳機能介入 / 視線計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
背景:近年,「自己意識の科学」が積極的に進められている。2000年以降の心理学関連領域において,「自己」という感覚はどう生起しているのか,「他者」との円滑な相互作用がどう実現されているのか,という問いに注目が集まっている。本研究では,その基盤となっている可能性のある「予測誤差」に注目することで,「自己と他者を分離しながら結合する」ことを可能にしている認知神経メカニズムの計算論的モデル化を行う。そこで運動フィードバックの自他帰属課題を用いることで,自他帰属の弁別力やフィードバックコントロールの精度の個人差を特定する。また,これらのパフォーマンス低下は,脳の特定の領域の機能不全が原因であることを考えると,TMSやtDCSといった方法による非侵襲的な脳機能の一時的な阻害により,健常者であっても類似した現象を再現できる可能性がある。 研究実施計画①:既存の実験設定に視線計測を導入する準備を行った。視覚誘導運動中にリアルタイムのモーフィングによる予測誤差を発生させ,この課題に視線計測装置の追加を行うことで,運動データと視線データをつきあわせる。本年度は,そのためのシステム開発を行い,来年度で実験実施の準備を完了した。 研究実施計画②: 自己感を説明する予測誤差を機能阻害する介入実験をのべ30名以上の一般参加者で実施した。fMRIとtESの同時計測実験により,右の側頭頭頂連合野をターゲットとした機能阻害を導入することで,特定の脳機能結合がtESのパラメタ依存で変調しうることを示唆した。 重要性:これらの計算論的・介入的実験によって,自己の身体・運動表象のメカニズムが脳の機能と結びつく形で解明されれば,私たちがどのように自己と他者を区別し,また同時に自己と他者をつないで 認識しているのか,私たちの社会的機能の基盤および精神病理学的な個人差についての理解が深まると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,マルチチャンネルのtES装置の導入(東大)や,十分な人数での高知工科大でのfMRI-tES同時計測実験を完了できた。一方で,視線計測の本実験実施は,来年度以降で本格的に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
tES装置の導入および視線計測の準備までは完了しているため,本実験を順次実施していく。コロナの状況次第で実験の可否が不透明であるが,それ以外には懸念等はない。
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