2021 Fiscal Year Annual Research Report
臨界型変分問題における領域の幾何の影響-解空間大域構造とコンパクト性喪失機構-
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19H01800
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
高橋 太 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (10374901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 信 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (10243354)
橋詰 雅斗 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 助教 (20836712)
石渡 通徳 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (30350458)
猪奥 倫左 東北大学, 理学研究科, 准教授 (50624607)
佐野 めぐみ 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (70834935)
高津 飛鳥 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (90623554)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 臨界型変分問題 / コンパクト性の喪失 / 領域の幾何 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、Sobolev 不等式、Hardy 不等式などの関数不等式の最良定数を定める最小化問題や Trudinger-Moser 不等式に由来する変分問題など、その近似解の列の相対コンパクト性がアプリオリには期待できない「臨界型変分問題」を取り扱い、解空間の大域的構造、及び近似解の列がコンパクト性を喪失する機序について研究することを目的としている。特に本研究課題では、変分問題の解空間(エネルギー汎関数の臨界点の集合)の大域的構造や近似解の列の非コンパクト性が、領域の境界の曲率や形状、滑らかさなどの微分幾何学的性質にどのように影響されるのかを定量的に解明することを目指す。より具体的には、以下の課題について新しく結果を得ることを目的とする。 (1) 種々の Trudinger-Moser 型不等式に付随する変分汎関数の臨界点集合の大域的構造と領域の微分幾何学的性質との相関、特に領域が凸な場合の最大化関数の一意性の成否 (2) 種々の Hardy 型不等式に付随する最小化問題の最小化列のコンパクト性喪失メカニズムと領域の幾何との相関 (3) 臨界変分構造を持つ種々の楕円型方程式に対する特異領域上での爆発解析 本年度は研究分担者の佐野めぐみ氏との共同研究により、調和移植を利用した半空間での臨界型 Hardy 不等式の導出に尽力し、結果を得て共著論文を投稿、既に掲載受理の通知を受けている。また、Finsler 多様体の中ではもっとも単純な Finsler-Minkowski 空間(ユークリッド空間に Finsler ノルムを備えたもの)での Sobolev 不等式、Hardy 不等式、Trudinger-Moser 不等式などの各種の関数不等式に調和移植の方法を適用し、Finsler radial 関数に対して新規な関数不等式の導出とその達成可能性に関する論文を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一昨年度より続くコロナ禍の影響で、海外共同研究者との直接的な相互訪問による研究連絡は引き続き困難なままで、例えばミラノ・パルテノープ大学の共同研究者との対数型 Sobolev 不等式に関する研究など、一部の研究計画の推進に遅れが見られる面もあるが、新しく取り組んだ Neumann 境界条件を持つ関数空間での臨界型 Hardy 不等式に関連する固有値問題の解析で進展があり、研究計画は比較的順調に推移している。研究代表者の高橋は、2021年度中に研究論文5本の発表を行った。また、2021年度の日本数学会第20回解析学賞を、授賞題目「Hardy型不等式の精密化および非線形楕円型方程式の漸近解析」により受賞した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の前半は、主に Sobolev 不等式、Hardy 不等式等の各種関数不等式の研究に尽力してきたが、研究計画最終年度を迎える2022年度には、本来の研究目的に立ち戻って、臨界型変分問題の非コンパクトな(近似)解の列の挙動と領域の幾何との相関の解明に注力する予定である。これらの主題は、関数空間同士の埋め込みの観点からは関数空間論とも密接に関連し、特に斉次 Sobolev 空間のより詳しい構造定理やプロファイル分解の技術と相まって、現在では技術的にもアタックできる状況が整ってきていると思う。最も単純な場合の p-ラプラシアンを主部に持つ Brezis-Nirenberg 型境界値問題の爆発解の漸近挙動でも「1点爆発解が領域のどこに集中するか」は未解決のままである。方程式が係数関数を持つ場合は、係数関数の幾何と領域の幾何が相互作用を起こして爆発点の位置決めを行うと考えられるが、主部の微分作用素の非線形性が難点となり、正確な位置決めは現在まで知られていない。今後はこのような問題にも取り組んでいく方針である。
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Research Products
(7 results)