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2020 Fiscal Year Annual Research Report

拡張アンサンブルによる一次相転移の理論解析

Research Project

Project/Area Number 19H01810
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

清水 明  東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10242033)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2022-03-31
Keywords統計力学 / 熱力学 / エントロピー
Outline of Annual Research Achievements

目標 (i), (ii)の研究をさらに押し進めて エントロピーの自然な変数に、互いに非可換な物理量を含むような量子系にも適用可能なように、「スクイズド・アンサンブル」を拡張する定式化を行った。 まず、この拡張されたスクイズド・アンサンブルが、熱力学極限で厳密な結果を与えることを示した。つまり、エントロピーの自然な変数で指定された、平衡状態を表す密度演算子であることを示した。このとき、エントロピーの自然な変数は、パラメーターの値を変えることにより変えられることも示した。
さらに、 この拡張されたスクイズド・アンサンブルに特有の様々な公式を導き、従来の問題点を解決した。これにより、たとえ非可換性があろうとも、任意の相転移をする系について具体的な予言を行う手法を確立することができた。とくに、マイクロカノニカル・アンサンブルのように、いったんエントロピー関数 S(E, V, N, M) を求めてから E, V, N, M で微分して初めて示量変数が求まるのではなく、直接に、温度が、簡単に精度よく得られる公式を確立した。
また、これらに関係して、孤立量子系が熱力学と整合する振る舞いをするための条件や、物理量の間の関係を調べた。さらに、目標(iii)である、多体相互作用系の様々な問題に適用することを始めた。具体的な計算手法を構築し、実際にいくつかのモデルについて、相転移の性質を明らかにすることを始めた。
さらに、これらの知見を利用して、エントロピーと量子効果の両方を利用した微小機械の設計指針を作り、実際にプロトタイプを設計して論文化した。
また、これらの研究で得られた相転移の知見を広く伝えるために、熱力学の教科書の改訂にもとりかかった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

まず、本年度に計画した研究内容はすべて達成した。具体的には、エントロピーの自然な変数に、互いに非可換な物理量を含むような量子系にも適用可能なように、「スクイズド・アンサンブル」を拡張する定式化を行し、この拡張されたスクイズド・アンサンブルが、熱力学極限で厳密な結果を与えることを示した。このとき、エントロピーの自然な変数は、パラメーターの値を変えることにより変えられることも示した。さらに、 この拡張されたスクイズド・アンサンブルに特有の様々な公式を導き、たとえ非可換性があろうとも、任意の相転移をする系について具体的な予言を行う手法を確立することができた。とくに、温度が、簡単に精度よく得られる公式を確立した。さらに、多体相互作用系の様々な問題に適用することを始め、具体的な計算手法を構築し、実際にいくつかのモデルについて、相転移の性質を明らかにすることを始めた。これらについて、論文投稿を準備中である。
これらの成果に加えて、統計力学と熱力学について、関連する成果も挙げることができた。まず、孤立量子系が熱力学と整合する振る舞いをするための条件や、物理量の間の関係を調べた。特に、熱力学の特徴である、平衡状態間遷移に関して、量子力学と整合するための量子系の条件を明かにする道筋を付けることができた(論文投稿準備中)。
さらに、応用面での活用を目指して、エントロピーと量子効果の両方を利用した微小機械の設計指針を作り、実際にプロトタイプを設計して論文化することができた。。
また、これらの研究で得られた相転移の知見を広く伝えるために、熱力学の教科書の改訂にもとりかかり、その中で、一般化された相律や相分離に関する新たな結果を得ることができ(論文投稿準備中)、それを教科書にも取り込むことにした。
以上のことから、当初の計画以上に進展していると判断した。

Strategy for Future Research Activity

2021年度は、本研究の最終年度にあたるため、いままでに得られた成果を完成させて論文化することを目指す。同時に、熱力学の教科書と、量子統計力学の教科書として、得られた成果を広く公表し、使いやすくするためのガイドラインとする。これにより、スクイズド・アンサンブルという新しい概念が誰にでも使いやすくなる。
さらに、熱力学の教科書に盛り込む、熱力学における一次相転移の新しい結果の数々と組み合わせて、マクロな系の統計力学を進展させることが出来るであろう。また、一般化された相律や相分離に関する新たな結果は、化学や生物学や工学への応用が期待できる。たとえば、未知の物質で相共存が起こっていたときに、ひとつの平衡状態を実験的に観察するだけで相図における相共存領域の次元が推測できることは、複雑な物質を扱うこれらの分野に便利な理論的な道具を与えることができると期待できる。
このように、今後は、研究の完成を行うとともに、得られた成果を広く発信し、広く利用してもらえるような活動に注力する。

  • Research Products

    (10 results)

All 2021 2020

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (9 results)

  • [Journal Article] Entropic Quantum Machine2020

    • Author(s)
      Ryoko Hatakeyama and Akira Shimizu
    • Journal Title

      Phys. Rev. B

      Volume: 101 Pages: 195427-1-8

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.101.195427

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 一般化されたスクイズドアンサンブルの応用2021

    • Author(s)
      米田靖史,清水明
    • Organizer
      日本物理学会 第76回年次大会(2021年)
  • [Presentation] 一般化された相律による多成分系の相分離の解析2021

    • Author(s)
      清水明
    • Organizer
      日本物理学会 第76回年次大会(2021年)
  • [Presentation] 一般化された平衡状態の線形感受率と熱平衡化2021

    • Author(s)
      千葉侑哉,清水明
    • Organizer
      日本物理学会 第76回年次大会(2021年)
  • [Presentation] 巨視的二次元電子系における電流ゆらぎへの局在状態の寄与2021

    • Author(s)
      久保賢太郎、浅野建一、清水明
    • Organizer
      日本物理学会 第76回年次大会(2021年)
  • [Presentation] スクイズドアンサンブルの拡張とその応用2020

    • Author(s)
      米田靖史,清水明
    • Organizer
      日本物理学会 2020年秋季大会
  • [Presentation] 熱機関のパワーと効率の関係の熱力学的導出2020

    • Author(s)
      清水明
    • Organizer
      日本物理学会 2020年秋季大会
  • [Presentation] クエンチ磁気感受率と複数のマクロ物理量固定の熱力学的磁気感受率の関係2020

    • Author(s)
      千葉侑哉,清水明
    • Organizer
      日本物理学会 2020年秋季大会
  • [Presentation] 巨視系における電流ゆらぎの位置依存性2020

    • Author(s)
      久保賢太郎, 浅野建一, 清水明
    • Organizer
      日本物理学会 2020年秋季大会
  • [Presentation] 固体電子系の電磁応答による電子の永久電気双極子能率探索2020

    • Author(s)
      川口廣伊智, 清水明
    • Organizer
      日本物理学会 2020年秋季大会

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Published: 2021-12-27  

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