2019 Fiscal Year Annual Research Report
Sensitivity of earthquakes to stress perturbation: theory and experiment
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19H01811
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
波多野 恭弘 大阪大学, 理学研究科, 教授 (20360414)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地震 / 潮汐 |
Outline of Annual Research Achievements |
地震発生頻度が応力摂動に対して鋭敏に応答する条件を解明することを目的として、断層破壊過程を力学的にモデル化し、応力摂動のもとで滑り破壊がいかに進展するか、そのダイナミクスを調べている。 今年度においては、断層破壊過程を連続体力学に基づいてモデル化した。媒質に関しては線形弾性論を仮定し、 断層に働く摩擦力は岩石摩擦によって経験的に知られている法則を用いている。この系では、摩擦力と弾性力が一定の条件を満たすと滑りが不安定化し加速していく。本研究では、この系に応力摂動を加えた際の滑り加速過程を解析した。このモデルでの地震発生頻度は、「滑り速度が閾値を越えるまでの時間」の逆数に対応すると解釈される。 この系に正弦波的な応力摂動を加え、振幅・周期やスペクトルに対して地震発生率がどう変わるか調べるために系統的なシミュレーションを行った。単一周期の摂動については、摂動周期には依存せず、振幅に対して指数関数的な応答を示すことを確認した。その際に特性応力として解釈される定数を評価した。この結果は複数の周期を含む場合も同様であり、地震発生率は応力摂動の周期には依存せず、摂動の振幅だけで決まることを明らかにした。さらに法線応力の時間変化に対応する摩擦法則も実装し、その影響も調べた結果、応答の位相が逆になり、摂動に対する応答が弱まることも発見した。 これらシミュレーション研究と並行して、モデルを少し単純化した状況での解析解を求めることにも成功した。結果をシミュレーションと比較し、良い一致を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
断層破壊過程の力学的なモデル化として、今年度は最も簡単な場合を仮定した。すなわち、摩擦特性が均質な平面である。この場合については、最も不安定な波長で決まるパッチ状領域でのみ滑りが不安定化し加速していくので、空間自由度を落とした1自由度モデルでよく記述できることが知られていた。先行研究のほとんどでは、この1自由度モデルに応力摂動を加えて応答を見ることが行われていた。しかしこの方法では、すでに加速が開始した状態を初期状態にとるので、それ以前のゆっくり不安定化していく状況での応力摂動の効果は考慮されない。本研究ではそこを解消するために、滑りが十分に遅い状況から加速していく最中への摂動の影響までフルに調べる連続体シミュレーションを実施する点に計画の特色があった。その計画は今年度中に実施して成果を得ることができたので、最も大事な点を確実に抑えることができたと言える。したがって、計画は順調に進展していると判断する。時間の余裕があれば、不均質な断層や非平面断層における摂動効果を調べることも視野に入れていたが、当初の計画でも十分な成果が得られたので、これらエクストラの課題は次年度以降に余裕があれば行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
地震発生頻度は統計的な量であるが、応力は力学的な量であり、両者の関係はさほど自明ではない。両者を結びつけて理解するために、以下二段階のステップで研究を進める。1. 応力摂動が地震発生過程のダイナミクスに与える影響を解明し、2. その上で地震発生過程ダイナミクスと地震発生頻度を結びつける。ただしこの具体的な関係はモデル設定によって異なりうる。 今後は、断層破壊過程を簡素化した摩擦の力学系的モデルを用いた解析を行う。これは滑りや微小破壊が雪崩的に連鎖して不安定な破壊伝播様式をモデル化したもので、滑り量や空間が離散化されているという点で非常に簡素化されたモデルではあるが、地震や不安定な破壊現象の統計的側面を再現する。このモデルに応力摂動を加えた上で、その統計法則の応答を解析する。この系における地震発生率はより直接的に定義されるので、摂動の振幅・周期やスペクトルに対して地震発生率がどのように変化するか解明する。単一周期の摂動からはじめて、複数の周期を含む場合にも結果を拡張する。さらに、モデル計算の結果を様々な地震カタログと比較し、モデルを用いて得た定量的結果のより深い意義について議論する。
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