2019 Fiscal Year Annual Research Report
強光電磁場とキラル分子の非摂動磁気双極子相互作用による円偏光高次高調波発生
Project/Area Number |
19H01814
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
関川 太郎 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90282607)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | キラル分子 / 円偏光 / 高次高調波 |
Outline of Annual Research Achievements |
2色の対向円偏光を同軸に重ねた合成電場を安定に生成し、その合成電場を気体原子・分子に集光することにより円偏光高次高調波を発生することができる。キラル分子は液体もしくは個体であることが多く、ガス化することが高次高調波発生による研究のキーポイントである。今年度の目標は、1)キラル分子を気化して真空中に噴出する装置の製作、2)合成電場をキラル分子ガスに集光す るための光学系の構築、3)高次高調波を観測するための分光器と受光器の設定を行うことであった。 1)については、内部を真空にしたバブラーの貯留セルを湯煎し、摂氏60度程度に安定に昇温することにより蒸気圧を高めた。貯留セルには液体試料を封入するとともに、ヘリウムガスを定常的に流すことにより、真空槽に気化ガスを移送する。 2)については、二色のレーザー光を反射する誘電体多層膜鏡を用いて、真空槽の入射窓を含めて二色の群遅延を補正しつつ集光した。レンズの使用も検討したが、群遅延補正をおこなうため使用しなかった。 3)真空分光器とCCDカメラを結合し高調波スペクトルを観測できるよう、光学系と真空系を設定した。 以上の結果、リモネン分子鏡像異性体からの円偏光高次高調波スペクトルを観測することができた。以前、光電子分光器で観測した場合と同じように、高調波の次数とキラリティ に応じて強度変調が生じることを追試した。しかし、その信号変化量は数パーセントであ り、ノイズ等を注意深く取り除かないと検出できないことがわかった。 以上の成果のほか、単一次数の円偏光光源開発を行った。回折格子により分けた高次高調波の円偏光度の測定と解析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高次高調波スペクトルを光学分光器で測定できたので、今年度の目標は達成できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、リモネン分子より小さくて蒸気圧が高いことが期待される分子に対して、同様の測定を行う。蒸気圧が高いほうが、高調波発生量が増えることが期待され、より精密な比較が可能となる。 今年度は、キラルな現象を確認するために、円偏光の方向とスペクトルの関係を調べた。円偏光の方向を変えるために手動で広帯域波長板を回転して測定を行っていた。そのためデータの積算効率が低かった。その反省により、自動回転ステージを導入することによりコンピュータ制御で偏光子を回転できるようにする。測定の自動化を行い積算回数を増やしてより高精度のデータ取集をおこなう。キラリティと円偏光の関係がリモネンと同じかどうかに、興味がもたれる。 検出感度向上のため、反射型の直線偏光子と波長板の開発や制作を検討する。波長板により円偏光を直線偏光に変換し、直線偏光子で検出することにより、円偏光を敏感に検出できるのではないか、と考えている。 さらに、励起光を導入して、ポンププローブ測定を行えるよう光学系の配置を変更するための準備を行う。
|