2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of soft x-ray ultrafast magnetic imaging for revealing time- and space- resolved spin dynamics
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19H01816
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
和達 大樹 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (00579972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 雄也 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (30805510)
関 剛斎 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (40579611)
山崎 裕一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 統合型材料開発・情報基盤部門, 主任研究員 (70571610)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スピンダイナミクス / X線自由電子レーザー / 磁性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ピコからフェムト秒で動作するスピンデバイス開発に向け、スピンのダイナミクスを元素別に空間と時間の両方を分解して観測する測定によって、光や磁気によるスピンの励起状態であるマグノン、スキルミオン、磁化反転などの性質の発現機構解明を行うことである。今年度具体的に得られた結果は下記のものである。放射光やX線自由電子レーザーの軟X線の時間構造とコヒーレンスを用いることで、時空間分解スピンダイナミクスを目指した測定を行った。特にSACLA BL1において、Co/Pt薄膜の測定について時間分解磁気光学カー効果測定に成功した。反射光のカー回転角を多層膜ミラーによる回転エリプソメトリ法で偏光解析している。ポンプレーザーは波長800 nmのTi:Sapphireレーザーであり、磁場印可下、室温での測定である。Ptの消磁の時定数がCoより長いことが分かった。さらに、ポンプレーザーの強度を系統的に下げたところ、Co吸収端では消磁の時定数が一定であるように見えるのに対して、Pt吸収端においては振る舞いが変化するように観察された。FePt系などにおいてもポンプ強度でしきい値が存在し、振る舞いが変化する報告などがあるので、それらと比較議論できる成果である。さらに、磁区観察ユニットを用いたレーザー照射下磁区観察の時間分解のセットアップを完成させた。レーザー照射後のGd22Fe70Co8薄膜の磁区観察から、レーザーの偏光に依存した磁区の違いがフェムト秒スケールで明らかになった。磁化反転のダイナミクスの解釈のための時空間における重要な情報が得られた。これらの結果は、時空間分解測定がすでに成功し始めていることを示す重要な研究成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで当初の計画通り順調に研究が進展している。特に、SACLAにおいて時間分解X線測定が順調である。X線のコヒーレンスを用いることで、集光レンズを用いずに小角散乱の測定から時空間分解測定が実現間近となった。さらに、時間分解型のカー顕微鏡が確立した。実際にレーザー励起磁化反転の時空間分解測定ができたのは重要な成果であり、サブミクロンでフェムト秒のダイナミクス測定が可能となった。物質探索も進んでおり、国内外の放射光X線とX線自由電子レーザー測定により、酸化物で初めての例となる光による反強磁性から強磁性転移と、価数揺動系の光によるフェムト秒価数制御などが実現した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は下記のように研究を進める。SACLAと実験室レーザーの併用により、時空間分解測定をさらに進める。具体的には、SACLAのBL1の軟X線パルスと、実験室レーザーの高次高調波発生の両方で、軟X線パルス光(フェムト秒スケール)を用いた時空間分解測定を行うことを目標とする。特に、実験室レーザーからの高次高調波をどのような方法で効率よく発生させることができるか、を探究する。また、SPring-8やSACLAなど、国内外の放射光X線とX線自由電子レーザーを用い、遷移金属化合物の光誘起による新しい電子状態を探索する。特に、強磁性体の磁化の制御、遷移金属化合物の価数の制御、などにおいて、光でどのように新しい物性が得られるかに注目する。また、異方的超伝導が期待される物質などについては自ら合成から行い、X線による価数の測定や実験室顕微鏡による電子状態の異方性の観測を目指す。
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Research Products
(9 results)