2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H01821
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野口 篤史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60761525)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 量子エレクトロニクス / 量子制御 / イオントラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、研究課題である極低温での電子トラップ実現のため、まずは室温高真空の実験系を立ち上げ、真空中の電子のガイドと捕獲のための実験をおこなった。 高真空系は、ターボ分子ポンプとイオンポンプ、NEGポンプを併用することで実現し、およそ10^(-5) Pa程度の高真空が達成された。また、真空チャンバー内に電子銃・加速電極と電子観測のためのマイクロチャネルプレートを配置し、低フラックスの電子を観測できることを確かめた。 さらに電子のガイド・捕獲のために、マイクロ波周波数で駆動する線形パウルトラップの開発を目指した。2次元の電極を形成し、外部から同軸ケーブルにより数ワットの高強度のマイクロ波を導入することによって、電子に対して四重極ポテンシャルを形成する。実験では、電子銃からの電子が、四重極ポテンシャルによる影響を受けて曲がることを確認している。現在、パラメータを変えながら、電子の軌跡の変化を確認し、四重極ポテンシャルの振る舞いを評価している。またその実験の中で、ポテンシャル内に電子を導入する際の結合効率の悪さが判明し、電子銃に代わる電子の導入方法が必要であることを明らかにした。 続いて、極低温での電子捕獲を目指し、極低温で動作可能な電子源の設計をおこなった。電子の生成方法として、原子のマイクロ波で補助された光イオン化過程を用いるのが良いと結論した。現在、電子源開発用真空チャンバーを開発、電子源の実現と電子のエネルギー評価に向けた準備をしている。 また、極低温で電子がトラップされた際、それを測定するための超伝導読み出し回路が必要になる。真空中での電子の振動を電気信号に変換するため、3光波混合の物理に基づく読み出し方法を用いる。そのために2次の非線形性を持つ超伝導回路を開発し、その回路によって他の物理系の精密測定を行う実験を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、室温真空中での電子実験系の開発ができた。実際に電子を捕獲するところまでは至らなかったが、そのための課題を洗い出すことできた。また、この課題を克服する手法も提案し、またその実現のための準備を開始している。本研究課題の実現に向けて、実験系の立ち上げも含めて順調に滑り出したと言える考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度では、原子のマイクロ波補助光イオン化による電子源の開発を素早く済ませ、マイクロチャネルプレートによって電子の発生確認とそのエネルギー揺らぎの評価を行う。同時に超伝導マイクロ波共振器からなる四重極電極の開発を行う。超伝導体にはキネティックインダクタンスの小さな窒化チタン膜を用いる。シリコン基板上の窒化チタン膜の微細加工により、Q値10000を超え、さらに高強度のマイクロ波が導入可能なマイクロ波共振器の実現を目指す。
|
Research Products
(1 results)