2019 Fiscal Year Annual Research Report
マルチフェロイック物質における光・マグノン・フォノン結合と伝播イメージング
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19H01828
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 琢哉 東京工業大学, 理学院, 教授 (40451885)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超高速分光 / マルチフェロイック物質 / マグノン / フォノン / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
スピントロニクスの研究分野では、電流の代わりに、スピン自由度の流れ(スピン流)を用いる。スピン流として特にスピン波(マグノン)を用いる研究分野はマグノニクスとよばれ、ジュール熱が原理的に生じないため盛んに研究が行われている。練成波は物質中の素励起間だけでなく、物質内素励起と電磁波との間にも形成される。分極波と電磁波の練成振動の量子をフォノン・ポラリトンという。BiFeO3は、強誘電性によってフォノン・ポラリトンを形成すると期待される。また、BiFeO3は反転対称性が破れているので、赤外活 性なフォノン・ポラリトンをラマン散乱過程で励起することができると期待される。本研究は、フェムト秒光パルスを用いてBiFeO3にTHz帯反強磁性スピン波(マグノン)とフォノン・ポラリトンを励起し、それらが結合したマグノン・フォノン・ポラリトンの空間伝播ダイナミクスを実時間でイメージングし、その物理を解明することを目的とする。 今年度はマルチフェロイック物質BiFeO3においてポンプ・プローブイメージングを行った。励起光源は繰り返し周波数1kHz、パルス幅70fsのフェムト秒パルスレーザーであり、直線偏光のポンプ光で試料をインパルシブに励起した。円偏光のプローブ光により試料の複屈折を測定し、CMOSカメラを用いることでイメージングした。得られた時間・空間分解データをフーリエ変換することで、周波数・波数空間における分散関係を得た。BiFeO3はサブTHzにΦ、Ψマグノンモード、2.4THzにEフォノンモードが観測されている。分散曲線においては、分散の小さいマグノンモードと、フォノンと電磁波が結合したフォノン・ポラリトンが観測された。 さらに実験で得られた時間・空間分解データから効率的に分散関係を得る数値計算手法について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
年度当初に予定していた計画がほぼ達成された一方、当初の予定に含まれていなかった方向へ研究が進展したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は低温でマグノンとフォノン・ポラリトンを観測し、分散関係上で両者が交わる点におけるアンチクロッシングを調べる。それによって、マグノンとフォノン・ポラリトンの結合状態が得られ、マルチフェロイック物質における強結合状態についての知見を得る。 励起されたマグノン・フォノン・ポラリトンとポンプ・プローブ偏光との関係、温度依存性を詳細に検討し、励起機構と検出機構を明らかにする。逆ファラデー効果、逆コットン・ムートン効果などの非共鳴インパルシブ誘導ラマン散乱過程のほか、光の吸収に基づく光弾性結合の可能性について検討する。
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