2019 Fiscal Year Annual Research Report
Nonreciprocal magnons in noncentrosymmetric magnets
Project/Area Number |
19H01834
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 卓 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (70354214)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
那波 和宏 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10723215)
木村 尚次郎 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20379316)
速水 賢 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (20776546)
奥山 大輔 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (30525390)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | magnon / nonreciprocal / noncentrosymmetry / neutron scattering / electromagnetic effect |
Outline of Annual Research Achievements |
磁性体の秩序状態からの素励起であるマグノンはスピン流の担い手として近年大きな注目を集めている。本研究は反転対称性が破れた磁性体に予想されるマグノンの非相反伝播(順方向伝播と逆方向伝播の不等価性)の確認、並びにその外場制御の可能性の探索を最終目標にしている。研究計画はi)非相反マグノン物質群の微視的機構解明、ii)新非相反マグノン物質の探索と発見、iii)マグノン分散に対する電場等の外場効果の確認からなっている。研究初年度である2019年度はi), ii), iii)のそれぞれについて以下の研究を行った。 i) a-Cu2V2O7 は反転対称が破れた反強磁性であり、我々のこれまでの研究で反強磁性マグノン分散の分裂が初めて確認された物質である。本物質に関する初年度の研究実績は次にまとめられる。改良ブリッジマン法による cm サイズ単結晶の安定育成手法の確立。単結晶を用いた電場下磁気測定による電気磁気効果の理解(協力者Piyawongwatthanaおよび分担者木村と共同)。精密X線構造解析による反転ドメイン不在の確認(協力者Piyawongwatthanaおよび分担者奥山と共同)。 ii) 非相反マグノン候補物質としてデータベースを駆使し種々の物質を探索した。候補としてあがった1物質(Cu-Mo-Se酸化物)に関して、実際に水熱法による試料合成、バルク磁気測定、および粉末中性子回折実験を行った(協力者Piyawongwatthana および分担者那波と共同)。 iii) 外場下のマグノン非相反制御の可能性探索としては、面内磁場効果の理論的に検討を行った(分担者速水)。また、電場中のマグノン分散制御の可能性探索としてa-Cu2V2O7 の電場下マグノン測定の予備実験を行った。 これらの研究により非相反マグノンを生じさせるマグノン分散に関する理解が大きく進んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
詳細は研究実績の概要に記しているが、本研究で設定した3課題について、進捗状況は以下の通りと分析できる。 i) に関してはa-Cu2V2O7の巨大単結晶育成や精密結晶構造の理解から今後の精密物性実験へ展開への下地が完全に確立した。特にこれまではっきりしていなかった反転ドメインの問題に解決が見られたことは、本物質の物性理解の土台となる極めて大きな進展と言える。 ii)に関しては複数の候補物質の発見から実際の物質合成、バルク測定および中性子回折と、一連の研究がスムースに行われており、進捗は十分と言える。 iii)に関しても、磁場下非相反マグノンの理論的示唆や電場下磁気測定等新しい知見が得られており、研究計画後半で行う予定であった電場下マグノン測定を前倒しで予備実験するなど、極めて順調に進んでいると言える。 一方で、一方で、当初 i)の項目として予定した(a-Cu2V2O7以外の) 既知非相反物質に関する研究は限定的となってしまった。しかしながら、これは a-Cu2V2O7研究が極めて順調に進んだために他の課題への力配分を多少下げたことによるものであるため適切な研究マネジメントの範囲と判断した。 総じて、初年度としては平均すればほぼ予想通りの進捗が見られている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で設定した3課題に関して、2019年度の研究の進捗を踏まえ、今後の研究としては以下の研究方策を考えている。 i) 既知の非相反マグノン物質として LiFe5O8 の単結晶育成、物性測定、並びにマグノン分散計算を更に進め、中性子散乱法による本物質の非相反マグノン確認実験を計画する。また、a-Cu2V2O7 に関しては異常に大きなジャロシンスキー・守谷相互作用の問題が未解決である。したがって、この点に関してさらなる研究を進める。 ii) 初年度は一つの候補物質に関して物性測定を始めたところであるが、候補物質は他にも多く存在するため、それらに関する物質合成と磁気構造を行う。2020年度としては、磁気モーメントの比較的大きな系(すなわち、磁気転移転移温度も高く、かつマグノンとしても観測が容易な系)において非相反マグノンを探索すべく、Fe や Mn、更には希土類系にも探索の幅を広げる。 iii) a-Cu2V2O7 の電場下磁気測定に関しては、実験結果は詳細に得られているもののその理解には未だ不明な点が多い。そこで、他の手法(例えば電場下X線構造解析)等を組み合わせて理解を進めたい。また、電場下マグノン分散測定は予備実験から興味深い現象の可能性が見られているので、ぜひ本実験したい。 現時点で最も大きな問題は新型コロナ感染症の拡大による研究活動の停滞である。現時点で大学実験室での実験も不可能になり、2020年度前半の実験研究は大きく制限されるものと想像される。また、中性子散乱実験に関しては海外施設の利用が極めて重要であるが、海外渡航が再開できる目処は立っていない。そこで、現時点では、これまでに得られたデータの解析や理論計算に主軸を置くことで、できるだけ研究停滞を避ける所存である。
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Research Products
(23 results)