2020 Fiscal Year Annual Research Report
X線磁気イメージングと物性の同時測定による微小磁気構造体の外場応答の研究
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19H01835
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
有馬 孝尚 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90232066)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コヒーレントイメージング / 磁気イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
共鳴X線散乱実験による5d遷移元素化合物の秩序同定を行った。具体的には、レニウムの複合酸化物Ba2MgReO6における電気四極子秩序と磁気秩序が逐次転移する様子を、共鳴X線散乱実験によって明らかにした。また、BaサイトをSrで置換したSr2MgReO6においては電気四極子秩序が消え、磁気秩序のみが生じることを明らかにした。これらの秩序は、一つの結晶の中で種々のドメイン構造を取っていることが推察された。レニウムイオンのスピン状態や軌道状態は、レニウムのL2, L3吸収端における共鳴X線散乱によって非常に感度よく取得できるため、将来的にX線自由電子レーザー等を利用して、ドメイン構造を取得できる可能性が大いにある。 同様に4f軌道が部分的に占有された希土類化合物においても、同様の研究を遂行した。具体的には、GdRu2Si2が磁場と温度を変数として多彩な磁気相を示すことを示すとともに、共鳴X線散乱によって、各相の磁気変調ベクトルを決定した。数ナノメートルのサイズの様々な種類の微小磁気超構造が生じていることが結論付けられる。 3d遷移金属酸化物については、イルメナイト構造を有するMnTiO3において、単純な反強磁性秩序が磁気四極子と磁気トロイダルの強的な秩序を内包していることを可視光の方向二色性から明らかにした。また、コランダム関連構造を有するNi2InSbO6について、中性子散乱実験と軟X線小角散乱実験を行い、低温のらせん磁性相の磁気伝搬ベクトルの方向が三方晶のc面内で定まっておらず、微小磁気構造体が現れうる環境が作られていることを明らかにした。また、その磁気伝搬ベクトルが外部磁場印加によって制御可能であることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コヒーレントX線を用いてスピン超構造を観測するための対象物質の開拓が順調に進んでいる。それぞれの物質の磁気構造について共鳴X線散乱による同定を試みており、どの程度の感度で磁気観測ができるのかを明らかにしている。一方、コヒーレントX線散乱を用いたイメージングの研究については、2020年度に流行したCOVID-19感染症の影響が避けられず、実際に放射光X線施設で行った研究は限られており、シミュレーションでの評価を主に行った。これらのことを総合し、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、共鳴X線散乱を用いて様々な物質の磁気構造の評価を行い、観測対象物質の幅を広げる。候補としては、硬X線領域で敏感な磁気秩序解析が可能となる5d遷移金属化合物、軟X線領域でX線磁気散乱研究が可能な3d遷移金属酸化物、並びに、ランタノイド(4f遷移元素)化合物などが挙げられる。特に、空間反転中心を持たない化合物や、広い意味で何かのフラストレーションがあり、磁気超構造が出現しうる系の探索を続ける。 一方で、測定手法の開発については、シミュレーションのほかに実際の物質を用いた評価を進める。また、実空間像の取得においては、ダイナミックレンジができるだけ広いX線検出器が必要となるので、その開発にも協力する。そのほか、可視光を用いた磁気イメージングとの比較も行う。
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Research Products
(21 results)