2020 Fiscal Year Annual Research Report
Theory of Nonequilibrium Quantum Phenomena in Correlated Systems
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19H01838
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川上 則雄 京都大学, 理学研究科, 教授 (10169683)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非平衡 / 強相関系 / 非エルミート |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は非平衡領域にある強相関量子凝縮相において、レーザー誘起の量子相転移や実時間ダイナミクスなどに焦点をあてた研究を行うとともに、非平衡量子系に対する「強相関 非エルミート量子物性」という新しい視点からも研究を進めることを目的としている。2020年度に得られた主な成果についてまとめる。
〇2体ロスを伴う1次元ハバードモデルおいて、初期状態の反強磁性的な相関から時間とともに強磁性的な相関に反転が起きることを明らかにした。同様に、1次元ハバードモデルに2体ロスが入ったリンドブラッド方程式の厳密解を求め、その非平衡での性質を明らかにした。〇強相関系に対する非エルミート理論として、自己エネルギーの虚部に起因する例外点の効果を、系の持つ対称性と関連させて議論した。〇トポロジカルなサウレスポンプを2次元に拡張し、その性質をトポロジカルな観点から明らかにするとともに、冷却原子での実験を念頭において調和ポテンシャルトラップの影響も明らかにした。〇リュドベリー原子系を対象とし、系が無限温度に緩和しないScar状態の厳密な例を構築した。また、高周波で周期的にドライブしたフロケダイナミクスにおいて、マルコフ性が自発的に壊れ、新奇な現象に繋がる可能性があることを指摘した。〇系に一様に散逸がかけられた場合の自発的な整流効果について、冷却原子系での実験を念頭においた具体的模型を提案し、数値的にもこれが可能であることを確認した。〇純良な強相関系を対象とした電子流体力学を幾何学的を含む理論に拡張し、様々な新奇量子現象を理論的に予言した。具体的な実験のセットアップも提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり順調に研究が進んでおり、いくつかのテーマに関しては当初予定していなかった面白い結果がえられた。 まず、2体のロスを含む非平衡強相関系に関しては、いくつかの側面から包括的に研究を進めることができ、散逸と強相関の絡み合いによって誘起される非平衡ダイナミクスの理解が大きく進んだ。 強相関電子系の自己エネルギーの虚部による非エルミート理論に関しても、対称性と非エルミート性の絡み合いによって生じる現象を、非エルミート系特有の「例外点」という観点から包括的に理解することができた。 時間周期駆動系(フロケ系)に関しても、厳密な多体Scarの理論的提案や、マルコフ性の自発的破れの可能性の指摘など、着実な進展があったと考えている。 幾何学的な性質を取り入れた電子流体力学の定式化は、この分野における新たな進展をもたらすものと期待しており、今後、磁場効果などを取り入れ理論を充実させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行ってきた非平衡量子系のダイナミクスの研究を継続するとともに新たなテーマも取り上げる。まず、非平衡系の緩和過程の典型例として強い粒子散逸をもつ超伝導体の時間ダイナミクスを調べる。並行して、強相関開放系の基本的な問題である開放ハバード模型における非平衡定常状態としてηペアリング状態を調べる。さらに電子系の非線形効果を扱うため、磁場中での電子流体力学を整備する。以下のテーマを扱う。
〇非平衡量子系のダイナミクス: 非平衡超伝導体を扱う。冷却原子系を念頭においれ、強い粒子散逸をもつ非平衡超伝導体の時間ダイナミクスを調べる。粒子が外界に散逸することにより誘起される素励起の性質を明らかにする。また、散逸を含む・含まない超伝導の接合を考え、散逸効果による新奇ジョセフソン効果を提案する。 〇強相関非平衡系のダイナミクス:ハバード模型に対する量子マスター方程式を解いて、量子開放多体系の実時間ダイナミクスの研究を行う。特に、非平衡定常状態の安定解としてηペアリング状態を調べ、それを実現できる実験的なセットアップも提案する。 〇電子流体力学のさらなる拡張:低温において流体力学領域にある金属電子系に対して、特に磁場下における電子流体力学に幾何学的効果まで取り入れ新たな非線形・非平衡現象を理論的に提案する。さらに、これらの新奇現象を実験的に観測する方法を提案する。
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Research Products
(19 results)