2019 Fiscal Year Annual Research Report
Detection and control of Majorana particle in vortex core of topological superconductors
Project/Area Number |
19H01843
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
町田 理 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (60570695)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トポロジカル超伝導 / マヨラナ粒子 / 超伝導渦糸 / 走査トンネル顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,トポロジカル超伝導体候補物質FeSe0.4Te0.6において,希釈冷凍機走査型トンネル顕微鏡を用いた,超高エネルギー分解能分光イメージング測定を行った.その結果,渦糸芯において離散化した渦糸芯束縛状態の観測に成功した.また,マヨラナゼロモードと矛盾しないゼロエネルギー束縛状態と有限エネルギーの束縛状態の両方を有する渦糸とゼロエネルギー束縛状態は無く有限エネルギーの束縛状態のみを有する渦糸の二種類の渦糸の存在が明らかとなった.何が渦糸芯におけるゼロエネルギー束縛状態の有無を決定付けるかを調べるために,元々試料に内在するセレン置換量の不均一性,超伝導ギャップの不均一性,不純物分布との空間相関を調べたところ,これらの空間不均一性と渦糸芯におけるゼロエネルギー束縛状態の有無との間に明確な空間相関は見られなかった.また,ゼロエネルギー束縛状態の有無の一つの要因として渦糸間相互作用に着眼し,磁場磁場依存性の実験も行った.その結果,印可する磁場を強くすると,ゼロエネルギー束縛状態を有する渦糸の割合が劇的に減少することが新たに明らかとなった.観察された磁場依存性の結果は,磁場増加によって渦糸が高密度化したことに伴う,マヨラナ粒子間相互作用による影響を考慮することによって説明できることも理論計算によって明らかにした.これらの研究結果は,今後のトポロジカル量子計算への応用に向けて重要な知見になると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,本年度にトポロジカル超伝導体候補物質FeSe0.4Te0.6の渦糸芯におけるマヨラナゼロモードの検証とそのスピン状態の検証のためのスピン偏極探針作製・評価システムを構築を行う予定であった.前者は,FeSe0.4Te0.6の渦糸芯においてマヨラナゼロモードと矛盾しない,明瞭なゼロエネルギー束縛状態の観測に成功しただけでなく,マヨラナ粒子間相互作用によってマヨラナゼロモードが有限エネルギーの束縛状態へと分裂する新たな知見が得られ,予想以上の成果が得られた.他方,スピン状態の観測を目指した,スピン偏極探針作製・評価システムの構築に関しては,必要装置の導入はほぼ終了したものの,その動作確認にまでは至っていない.上記の研究進捗状況から本研究は,おおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
スピン偏極探針の作製・評価システムを構築し,FeSe0.4Te0.6の渦糸芯におけるゼロエネルギー束縛状態のスピン偏極性を調べ,観察されたゼロエネルギー束縛状態が本当にマヨラナゼロモードに由来するものかどうかを検証する.これまでの実験で,FeSe0.4Te0.6は非常に不均一な系であり,スピン偏極状態を調べる上でより均一な系が必要となる可能性が考えられる.そこでFeSe0.4Te0.6における実験と並行し,より均一なトポロジカル超伝導候補物質の探索も行う.
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Research Products
(11 results)