2019 Fiscal Year Annual Research Report
反強磁性体における電気磁気光学特性の電場制御に関する研究
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19H01847
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 健太 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (70586817)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電気磁気光学効果 / 電気磁気効果 / 反強磁性体 / マルチフェロイクス / 電場制御 / 分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、正味の磁化を持たないため機能性に乏しいと思われてきた反強磁性体において、空間反転対称性と時間反転対称性の破れがもたらす電気磁気効果に起因した新奇な光学特性(以後、電気磁気光学特性)を実験的に見出し、さらに、この電気磁気光学特性の電場制御の実現と解明することを目指すものである。本年度は、スピンの向きが僅かな摂動でも変化しやすい「弱磁気異方性」の反強磁性体を対象として、単結晶合成と電気磁気光学効果の有無の検証、さらには電気磁気光学特性に対する電場印加効果の追究を行った。得られた主要な成果を以下に記す。
銅イオンのスピンが磁気四極子的に配列している反強磁性体Pb(TiO)Cu4(PO4)4では、電気磁気光学効果により光の進行方向の正負に依存した線二色性が発現し、その符号が磁気四極子の符号と対応することが分かっている。本研究では、この符号対応を利用し、偏光顕微鏡という簡便な手法により磁気四極子ドメインの空間分布を可視化することに成功した。さらに、この手法を用いて、磁気四極子の空間分布が外部電場により再配列する様子を実空間観察することに成功した。
弱磁気異方性に着目した物質探索を行い、近赤外領域で20%を超える大きな方向二色性を示すコリニア反強磁性体を発見した。電場印加が可能な透過分光測定系を構築し、これを用いた実験により方向二色性の符号が電場で反転することを実証した。さらに、上記のPb(TiO)Cu4(PO4)4と同様の偏光顕微鏡を用いた実験により、反強磁性ドメインおよびその電場による再配列を実空間観察することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
磁気四極子型とコリニア型という別種のスピン配列をとる二種類の反強磁性体において電気磁気光学特性の電場制御に成功したことから、研究は順調に進展しているといえる。さらに、偏光顕微鏡により反強磁性ドメインが可視化できるという今回の発見は、反強磁性ドメインの電場応答ダイナミクスの追跡を可能とする特筆すべき成果である。ゆえに、研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
電気磁気光学特性を示す反強磁性体の物質探索を引き続き行い、高性能(弱電場、巨大、高速)な電場応答の実現を目指す。また、複数の反強磁性体における実験結果をベースとして、電気磁気光学特性の高性能な電場制御を実現するための主要因子を抽出し、その起源を考察する。また、今回、偏光顕微鏡により反強磁性ドメインの電場応答を実空間観察することが可能となったため、ドメインの観点からも高性能応答の起原に迫る計画である。
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