2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study of spin chirality in quantum spin liquids by thermal-Hall measurement
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19H01848
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 穣 東京大学, 物性研究所, 准教授 (10464207)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 量子スピン液体 / 熱ホール効果 / 熱輸送特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では未知の凝縮相である量子スピン液体に対して熱ホール効果の探索を行い、そのスピン励起の熱ホール効果の測定から、スピン素励起の持つスピンカイラリティなどの、これまで測定できなかった物理量を明らかにすることを目的としている。 今年度は磁気スカーミオン相が実現している絶縁体GaV4Se8における熱ホール測定を行い、磁気スカーミオンによるトポロジカル熱ホール効果を観測することに成功した。この強磁性絶縁体ではこれまでに行われた磁気測定や中性子散乱測定からネール型の磁気スカーミオン相が強磁性転移温度の20 Kから最低温度まで広い温度範囲にわたって存在することが指摘されていた。我々の熱ホール測定から次のような成果を得た(1)磁気スカーミオン相において非常に明瞭な熱ホール効果が観測されること(2)磁気スカーミオン相での信号が磁場に対して一定(2)熱ホール信号は磁気スカーミオン相でのみ観測され、ゼロ磁場近傍のcycloid相や強制強磁性相ではほぼ消滅する。この熱ホール効果の起源を明らかにするため、理論グループと共同研究を行い、我々の実験結果は強磁性体中で熱を運ぶマグノンの軌道が磁気スカーミオンの作る創発磁場によって曲げられることでよく説明できることが判明した。これらの結果はボソンである熱励起に対する初のトポロジカル輸送の研究成果で、磁気スカーミオンのつくる創発磁場が熱流に対しても金属中の電流と同様の効果を及ぼすことを初めて明らかにしたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
GaV4Se8における測定から磁気スカーミオンによる創発磁場による熱ホール効果を示すことに成功した。これは本研究の主題であるスピンカイラリティの示す顕著な熱ホール効果の一例であるといえ、大きな成果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
このGaV4Se8における研究から熱ホール測定が磁性絶縁体における磁気スカーミオン相の研究に非常に有用であることが分かった。他の磁気スカーミオン相の候補物質に適用することで、熱ホール効果を用いた研究をさらに推進する。
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Research Products
(6 results)