2021 Fiscal Year Annual Research Report
磁性体との相互作用を用いた単原子層ラシュバ型超伝導体に対する研究
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19H01849
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 徹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60245371)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ラシュバ効果 / 超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
Pbなどの超薄膜において、Rashba相互作用がもたらす新奇な2次元超伝導相が実現されていることを検証するための有力な方法の一つとして、近接させた磁性体の影響を調べることが考えられる。特に、スピンフィルターとなる強磁性体層を配置した障壁を介してトンネル結合させたPb超薄膜の2層構造試料を用いることにより、スピン三重項成分からの寄与を選択的に取り出すことが期待できる。 本年度は、交換相互作用に関する知見を得ることを目的として、Pb超薄膜と磁性体との間に非磁性金属を挿入した場合に対して研究を行った。2-3原子層のPb超薄膜表面を1-2原子層のAuでコーティングしたのちに、微量のFeまたはCoを堆積させた場合において、Pb超薄膜に直接堆積させた場合よりも、超伝導転移温度の減少率が大きくなるという、一見意外に思える結果が得られた。磁性体に隣接する原子がPbよりも価数が小さなAuに置き換わったことにより、伝導電子による磁気モーメントの遮へい効果、すなわち近藤効果が弱くなった結果として理解することができた。近藤温度が超伝導転移温度よりも大きな領域に対する理論によれば、磁性体の数密度に対する超伝導転移温度の減少率の大きさは、おおむね近藤温度に反比例する。FeおよびCoに対する結果は、Auでコーティングした場合でも、依然として伝導電子による遮へいの強い近藤効果領域にあることを示していると考えられる。一方で、Mnを堆積させた場合には、Auのコーティングによる効果は強くなく、近藤効果領域と自由磁気モーメント領域の中間領域にあることを示唆する結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非磁性金属を挟むことにおり超伝導体と磁性体との相互作用を系統的に制御できる可能性が開けた。
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Strategy for Future Research Activity |
非磁性金属と磁性体の組み合わせを系統的に変えて、磁性体と伝導電子との相互作用に関する統一的な理解をめざす。
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