2019 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on hierarchical simulation methods using slow variables to predict the flows of soft matter
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19H01862
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷口 貴志 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60293669)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マルチスケールシミュレーション / ソフトマター物理 / 階層間連携 / 高分子流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子製品を製造するには,高分子流体を様々な流路に流して,望みの形状に成形し,最終的に固化させるプロセスが必要になる.その一方で,高分子流体の流動の予測は容易ではない.なぜなら,高分子流体は高分子間のミクロな絡み合い構造とマクロな流動が互いに強く影響しあっているため,一方のスケールのみを扱っていては,正確な予測ができないからである.より高い精度でマクロな流動やミクロな高分子の状態を予測するには,両スケール階層間を同時に関係づけて扱える新しいシミュレーション手法,つまりマルチスケールシミュレーション法の確立が必要であり,本研究はこの方法論の確立と,スケール階層間の相関が強い系の流動現象にこの方法を応用することを目的としている. この目的を達成するため,2つの課題 (i) 高分子溶融体の流動と高分子の配向および絡み合い状態の関係の解明, (ii)流動下でのヘテロな高分子系(特に,会合性高分子)のマクロなレオロジー挙動と内部メソ構造変化の関係の解明,に取り組んでいる. 本年度の研究では,(i)では,マクロレベルで求まった速度勾配を条件としてミクロな高分子の運動とその状態を計算し,得られる情報(応力)を用いて流動を解くラグランジュ描像に基づく流動計算法と多数のミクロシミュレータの階層間接続法の基礎を確立した. 具体的には,壁面での境界条件を正しく導入する方法,流体粒子が不均一となる問題などを解決することで,安定に数値計算できる方法を見出した. また,(ii)では,会合性高分子系の1つとしてひも状ミセル系のレオロジー挙動に対して,絡み合い高分子を記述するために今まで研究されてきたスリップリンクモデルを,切断や会合が可能なひも状ミセルの絡み合い状態を記述できるように拡張し,同系の線形領域の実験で観測されているマクスウェル流体的レオロジー挙動を再現することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度の終わりに,コロナウィルスによる影響で,海外で開催される学会で研究成果を発表することができず,その旅費の繰越申請を行わざるを得なかったが,研究自体の進展はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
2つの大きな研究の柱のうち,(i)は特に順調に研究が進展しているので,このまま,非等温系や分子量分布がある系への拡張に展開する予定である. また,近年注目されている機械学習による方法を本研究にも取り入れて,より精度の高い流動予測や,計算時間の短縮が可能な新しい方法の研究開発を行う. まずは絡み合いのない単純な高分子モデルの場合に適用して実用性を検証し,その成果を踏まえて絡み合い高分子系に応用することを考える. また,機械学習による応力予測法が成功すれば,機械学習を取り入れた方法と本研究の中心課題である階層間連携手法を連携させて,より短い計算時間で大規模な系を扱える方法の研究も進める. (ii)では,会合性高分子系として,ひも状ミセル系でのレオロジーを集中的に研究する. 会合性高分子流体のダイナミクスを扱うために,スリップリンクモデルを拡張した会合性高分子のメソスケールモデル(拡張スリップリンクモデル)の開発を推進する. このモデルをより精度の高いものにするには,会合ダイナミクスの素過程をより詳細に知る必要があるが,実験的にその過程を観察することは困難である. そこで,この会合ダイナミクスを,よりミクロスケールなシミュレーションによって詳細に調べ,それを拡張スリップリンクモデルに取り込むことで,線形領域のみならず, 非線形領域のレオロジー予測も扱えるようにすることにも取り組む.
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Research Products
(16 results)