2020 Fiscal Year Annual Research Report
土壌トリチウム蓄積機構の解明と新規除染法の原理実証
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19H01877
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片山 一成 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (90380708)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トリチウム / 土壌 / 酸溶解 / マイクロ波加熱 / 環境保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的を達するため、本年度は下記の項目を実施した。 (1) 土壌分解システムの構築:構築したマイクロ波支援酸溶解システムを用いて、トリチウム水と接触した土壌試料を溶解すると、加熱中に一部のトリチウムが放出されることが確認された。電源ケーブルの挿入口や真空ポンプの接続口の気密性を高め、放出されたトリチウムを効率よく回収システムに輸送できるよう改善を図った。また、加熱中の気体成分放出を抑制するため、加熱温度の最適化を図った。(2) 酸性溶液中トリチウム計測手法の開発:酸溶液に投入する土壌試料の量や、土壌の種類によっては、残渣が生じ、トリチウム蓄積量の測定精度が低下する。そこで、酸溶解操作後の溶液に対するろ過システムを構築した。これを用いて回収した残渣に対して、マイクロ波支援酸溶解を実施し、残渣中に残留するトリチウムの定量に成功した。(3) 有機系土壌へのトリチウム蓄積:グローブボックス内において、比較的有機物を多く含む土壌に対して、トリチウム水の滴下を行い、その後空気の吸排気操作を行った。空気と共に排出されるトリチウムは比較的少なく、多くは土壌中に残留することがわかった。(4) 液相抽出回分式除染装置の開発:トリチウム汚染土壌を高温高圧水と接触させるための装置開発を進めた。金属製の小型容器に水を投入し、ヘリウムガスで加圧した後加熱することで、300℃、14MPa程度の高温高圧水環境をつくり出すことに成功した。(5)トリチウム蓄積機構の解明とモデル化:等速昇温加熱による土壌からのトリチウム放出曲線を解析し、放出ピークごとの放出速度と放出容量を定量し、天然土壌からのトリチウム放出特性を整理した。(6) 研究成果の公開:本研究を通じて得られた成果を国内外の学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、(1)土壌分解システムの構築、(2)酸性溶液中トリチウム計測手法の開発、(3)トリチウム汚染土壌の分解実証、(4)液相抽出回分式除染装置の開発、(5)トリチウム蓄積機構の解明とモデル化、(6)研究成果の公開を実施項目に掲げ、それぞれ計画的に取り組み、上述のようにおおむね予定通りの成果が得られている。これまで無機系の土壌を対象としてきたが、有機物を多く含む土壌へのトリチウム水曝露実験も開始し、多くのトリチウムを保持することが観測されている。現時点で、研究遂行上の問題は生じておらず、おおむね当初計画にそって進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、土壌に浸透したトリチウムの挙動について、概ね理解が進んできた。今後は、土壌から植物へのトリチウム移行挙動の理解への展開も視野に入れて研究を推進していく。植物が生育する土壌は、多くの有機物を含んでおり、これまで実験対象としてきた土壌とは、トリチウム挙動が異なる可能性がある。そこで、腐葉土などの有機系土壌も対象としてトリチウム曝露実験を行い、その後のトリチウム移行挙動を調べていく計画である。また、トリチウムが河川や湖沼に流出した場合も想定し、水草等へのトリチウム蓄積挙動を視野に入れた研究も展開したい。
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Research Products
(7 results)