2019 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ空間を有するナトリウムドープ炭素材料の液中プラズマ合成と海水電池への適用
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19H01890
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
竹内 希 東京工業大学, 工学院, 准教授 (80467018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
全 俊豪 東京工業大学, 工学院, 助教 (90781310)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 液中プラズマ / プラズマ生成確率 / 材料合成 / 二次電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機溶媒中で生成する液中プラズマの安定生成条件を明らかにするため,水・エタノール溶液やアニリンなどの有機溶媒中に電極対を設置して矩形波交流高電圧を印加し,電圧波高値,周波数,溶液導電率,溶媒の物性値などを実験パラメータとして,プラズマの詳細観測を行った。具体的には,電圧電流波形の観測,高速度カメラを用いた気泡およびプラズマの撮影などを行った。 導電率を数十uS/cm程度とした水・エタノール溶液中では,溶液を流れる電流によるジュール加熱とプラズマからの熱流束の双方により電極間に気泡が生成され,これがプラズマの生成確率に大きく影響することが分かった。エタノールを含まない場合は,ジュール加熱による微小気泡生成をきっかけとして電極間の絶縁破壊が起こると,電極間の大部分を占める大きな気泡が生成され,その内部でプラズマの生成が続くことが分かった。この気泡が電極間から離脱するとプラズマ生成が停止し,ジュール加熱による気泡生成のフェーズに戻る。一方,エタノールを含む溶液中では,絶縁破壊により電極間が多数の微小気泡で覆われることが分かった。この微小気泡群を貫くようにプラズマが生成されるためプラズマからの熱流束による気泡生成が起こりやすく,プラズマの持続が容易であるためプラズマ生成確率が高くなった。 一方,導電率が非常に小さいアニリンのような有機溶媒中では,ジュール加熱による気泡生成が非常に困難であるため,電極間の短絡によるプラズマ発生が求められる。大きな電界強度が得られる電圧波高値に加え,プラズマからの熱流束で気泡の生成を維持するための投入電力が必要であることが明らかになった。 また,有機溶媒中でプラズマを生成して得られた炭素材料の分析手法を確立するとともに,酸化還元反応触媒としての評価や,二次電池のアノード材料に用いて電池を作成して性能を評価する体制を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
有機溶媒中での液中プラズマ生成による炭素材料合成に向けて,液中プラズマの詳細観測手法を確立して安定生成条件を明らかにした。これにより,有機溶媒の種類や導電率を変化させた場合でもプラズマの安定生成が可能となり,炭素材料の合成が達成された。よって,次年度に予定していた合成炭素材料のアノード電極材料としての特性調査を前倒して行っており,二次電池の試作・評価も既に実施している。よって,本研究は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の当面の目標として,プラズマ生成条件と合成した炭素材料特性の関係,および,炭素材料特性と海水電池性能の関係を明らかにし,最適な合成条件を探る。 有機溶媒には,炭素の前駆物質としてベンゼンやキシレンなどの環状構造有機物を,ナトリウムの前駆物質として安息香酸ナトリウムなどのナトリウムを含む有機物をそれぞれ用い,100 mL程度の容量の有機溶媒中でナトリウムがドープされた炭素材料の合成を行う。印加電圧は正極性パルス電圧または両極性パルス電圧とする。印加電圧ピーク値は数kV程度,周波数は1 kHz~100 kHz程度,パルス幅は100 ns~1 us程度とする。電極と直列にバラストキャパシタを挿入し,プラズマ投入電力制御による反応場制御を可能とする。 初年度に得られた有機溶媒中でのプラズマ安定生成条件から各種パラメータの変化範囲を決定し,パラメータ研究を行う。得られた炭素材料の透過電子顕微鏡による観察や,表面積,元素構成や結合状態を計測して,プラズマ生成条件と材料特性の関係を明らかにする。その後,炭素材料をアノード電極材料として用いた海水電池を作成し,サイクリックボルタンメトリー法による電池性能評価や触媒性能評価を行う。以上を通して,炭素材料の特性と電池性能の関係を明らかにして,高性能な海水電池を実現するために必要なプラズマ生成条件を見出す。
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Research Products
(7 results)