2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H01891
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
成子 篤 京都大学, 基礎物理学研究所, 特定助教 (80749507)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 遼 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (70781392)
山内 大介 神奈川大学, 工学部, 助教 (10624645)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 相対論的宇宙論 / 宇宙マイクロ波背景放射 / 宇宙大規模構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、原始ゆらぎの非線形進化と宇宙マイクロ波背景放射の高精度計算に関する研究を主に進めた。
前者については、原始ゆらぎが非線形レベルでどのように進化するのかを明らかにすることを目標とした。この目標を達成するためには、通常注目されることが少ない、いわゆる宇宙論的なベクトル型ゆらぎやテンソル型ゆらぎにも着目する必要がある。そもそも宇宙論的なゆらぎには 3 つのタイプが存在し、重力ポテンシャルや密度ゆらぎなどに代表されるスカラー型ゆらぎ、重力波を表すテンソル型ゆらぎ、そして両者に属さないベクトル型ゆらぎがある。線形レベルではこれら3つのタイプのゆらぎは独立に進化するのに対し、非線形レベルでは混じり合って進化する。本研究では特に、非線形効果によってスカラー型ゆらぎからベクトル型・テンソル型ゆらぎ(重力波)が生み出されることに着目し、それらに関する理論研究を行った。宇宙論的摂動論と相補的な方法であり、成子が専門とする空間勾配展開法を用いて、ゆらぎの非摂動的な解析を行った。
次に後者に関して、観測精度の向上により、弱重力レンズ効果によって生じる宇宙マイクロ波背景放射の温度異方性の多点相関や偏光といった、線形レベルでは捉えることのできない小さなシグナルも、現在では議論できるようになってきている。こうしたことを背景に、数年前より世界の幾つかのグループで宇宙マイクロ波背景放射に対する高次摂動論の構築が進められており、齊藤と成子が属する日本グループも大きく貢献している。特に両者は、これまで近似的に取り扱われてきた弱重力レンズ効果の計算を、系統的かつ厳密に取り扱うことを可能にする方法の開発に成功した(curve-of-sight 法)。 本年度は、この手法を組み込んだ高次摂動論を完成させ、宇宙マイクロ波背景放射に生じる非線形効果の系統的な解析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究課題に専ら取り組む予定であった博士研究員が、年度途中で異動したため、研究の取りまとめに当初より時間がかかっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
空間勾配展開法を用いた原始ゆらぎの非線形進化に関する研究を完成させる。
|
Research Products
(25 results)