2020 Fiscal Year Annual Research Report
Deciphering string axiverse from multi-wavelength observations of gravitational waves
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19H01894
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
浦川 優子 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (80580555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北嶋 直弥 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (50737955)
西澤 篤志 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90569378)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アクシオン / 重力波 / 暗黒物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる目的は、重力波観測を通じてアクシオン暗黒物質の痕跡の探査を行うことであるが、本年度は、この派生研究において複数の成果が得られた。
アクシオンは暗黒物質の有力な候補の一つであるが、元々はQCDの強いCP問題を解決するために提案されたものである。暗黒物質の有力な候補であるQCDアクシオンは、QCD相転移期にグルーオンとの直接相互作用を通じてポテンシャルを獲得する。この直接相互作用が、宇宙におけるアクシオンの空間分布に与える影響は、これまでほとんど考えられていなかった。2022年3月に、Journal of Cosmology and Astroparticle Physicsに出版された論文(Kogai, Kitajima, Urakawa JCAP 03 (2022) 03, 039)では、直接相互作用の影響により、アクシオンが非常に非一様な空間分布を形成することを示した。この結果は、アクシオン模型の重要なパラメータであるPeccei-Quinnスケールを宇宙の観測から探る際に、従来課されていた基本的な仮定を、再考する必要があることを示唆する。
また、2021年7月に、同じくJournal of Cosmology and Astroparticle Physicsに出版された論文(Tanaka and Urakawa JCAP 07 (2021) 051)では、宇宙初期の加速膨張期であるインフレーション期に生成される原始重力波の計算の簡便法の開発に成功した。この成果により、これまではコストの高い数値計算が必要であった場合にも、解析的に原始重力波の計算が可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度までに、アクシオン由来の重力波の観測可能性の検証を大方終える予定であったが、重要度の高い派生研究で進展があったこと、また研究代表者が産休にはいったこと、の二つの理由により、当初の計画よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 本研究の主目的は、重力波観測、主に大型電波干渉計SKAを通じて大幅な精度向上が見込まれるナノヘルツ帯の重力波観測を通じて、アクシオン暗黒物質の痕跡の探査を行うことである。これに向け、アクシオン暗黒物質の模型の自由度を考慮した上で、予言される重力波振幅の大きさ、周波数を見積もり、その観測可能性を議論する。先行研究において、アクシオン由来の重力波のfinger printとも言える円偏光の観測には、重力波の非等方性が必要であることが指摘されている。この点を考慮した上で、アクシオン由来の重力波の円偏光の観測可能性についても議論する。
2) 派生研究の成果であるTanaka&Urakawa(2022)で開発した方法をもとに、多様なインフレーション模型において原始重力波の計算を行う。
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Research Products
(7 results)