2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H01897
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉本 茂樹 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (80362408)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ホログラフィック双対 / バルクの幾何 / 共形対称性 / 対称性の自発的破れ |
Outline of Annual Research Achievements |
ホログラフィック双対が知られているいくつかのゲージ理論において、ゲージ群 U(N) が U(N-1) x U(1) に破れた状況を考え、その U(1) 部分に関する有効作用を求めることによって、ホログラフィック双対な記述におけるバルクの計量を求める研究を行った。具体的には 4次元の N=4 超対称ヤンミルズ理論と N=2 超対称ゲージ理論、およびその有限温度系について、1ループの摂動計算により有効作用を求め、プローブブレインの有効作用と比較することによってバルクの計量を求めた。その結果、ゼロ温度の N=4 超対称ヤンミルズ理論の場合には期待する AdS 時空が導出できた。しかし、有限温度系や共形対称性がない N=2 超対称ゲージ理論では、期待するバルクの計量とは異なる結果を得て、その解釈が明らかではないため、まだ未完成である。一方、N=4 超対称ヤンミルズ理論の場合に期待される AdS 時空が得られたのは、共形対称性から従う事実であると予想されることから、共形対称性が自発的に破れた場合に得られる有効作用の構成法の研究も行った。その結果、予想通り、共形対称性が自発的に破れる系では AdS 時空が得られることがが分かり、それがあらわに見える有効作用の構成法を見出した。それだけではなく、より一般的な時空の対称性が自発的に破れる系に対しても、その有効作用がバルクに埋め込まれたブレイン上の計量や曲率などの幾何学的な量を用いて構成できることなどが分かった。これは、ホログラフィック双対におけるバルクの幾何を導出する手がかりを与える重要な成果と言える。この結果については現在、論文を執筆中である。これらの研究と同時に O(D,D) 対称性のある弦理論の構成や量子色力学のホログラフィック双対を用いた核子の重力形状因子に関する研究なども行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度のうちに論文にまとめて発表したいと考えいていた内容が、予想外に膨らんで、検討すべき事柄が増えたために時間が掛かっている。 また、当初、参加を予定していた研究会がコロナのために延期・中止となり、そのために繰り越しをしたが、結局、繰り越し額の大部分を未使用のまま返納することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、現在、執筆中の論文をできるだけ早く完成させて発表したい。また、同時に進めているいろいろな研究についても、成果が出始めているので、順次、論文にに発表していきたい。最大の課題は研究時間の確保であるため、他の業務をできるだけ効率良く進めて、研究に注力したい。
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