2020 Fiscal Year Annual Research Report
Challenge to the sign problem via path optimization
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19H01898
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大西 明 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (70250412)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏 浩司 福岡工業大学, 情報工学部, 教授 (50612123)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 符号問題 / 格子QCD / 経路最適化 / ニューラルネットワーク / QCD相図 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子核・重イオン衝突・コンパクト天体現象などで現れる高密度核物質の相図や状態方程式はいまだに基礎理論(QCD)から理解されていない。これはクォークや核子などのフェルミオンを含む有限密度系では符号問題が現れるためである。本研究では経路積分の変数を複素化し、符号問題が抑制されるよう積分径路を最適化する手法(径路最適化法)を発展させ、有限密度QCDの符号問題への挑戦を進めている。 2020年度は低次元(1+1次元)でのU(1)ゲージ理論の問題に取り組んだ。前年度までに低次元(0+1次元)QCDでの経路最適化に成功したが、1+1次元の複素結合U(1)理論ではゲージ自由度が残る場合に最適化が進まないという問題が見つかった。まず、ほぼ完全にゲージが固定できる場合には最適化可能であることを示し、さらに繰り越し期間にはより多くの問題に適用可能な方法として、ゲージ不変量を入力して積分経路の最適化を導入した。最適化に用いているニューラルネットワークへの入力として、ゲージ場を直接表すリンク変数ではなく、作用を構成するゲージ不変量であるプラケット(最も小さなループのトレース)を入力することにより、1+1次元U(1)ゲージ理論における経路最適化が順調に進み、広いパラメータ領域で厳密解も再現できることを示した。 また有限密度よりも符号問題が厳しくなる量子場の実時間発展についての研究も進めた。量子場の時間発展については古典場が広く利用されているが、量子平衡は記述できない。ここでは虚時間形式の作用をポテンシャルとみなし、1次元高い時空での実時間発展を記述するレプリカ発展法を提案し、量子平衡への緩和が実現することを示すと共に、量子場の理論から予測される熱質量が実時間発展の結果として得られることを示した。この論文はPTEP誌のEditor's Choiceに選ばれるなど、高い評価を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲージ自由度が残る場合には複素積分経路の最適化が進まないという問題は想定していなかったため、当初の計画と比べると進行が遅れていると言わざるを得ない。しかしながら、この新しい問題をゲージ不変量を入力することによって乗り越えられる、という一般的な知見が得られたことは重要な成果といえる。また強い符号問題が現れる量子場の実時間発展についての取り組みも行い、発表した論文はPTEP(Progress of Theoretical and Experimental Physics)誌の Editor's Choice に選ばれるなど、高い評価を得ている。これらの成果も合わせると、おおむね順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、ゲージ理論の経路最適化におけるゲージ自由度の問題についての研究を引き続き進めるとともに、より現実的な系への適用を試みる。 2020年度までの期間と繰り越し期間においてゲージ不変入力による経路最適化の有効性を示したが、一方で近年提案されたゲージ共変格子ゲージ理論を用いてもゲージ自由度を抑制した経路最適化が可能であると思われる。またニューラルネットワークの普遍的近似定理(universal approximation theorem)によれば、ゲージ自由度が残っている場合でも十分なニューロン数(ユニット数)をとれば最適化は可能なはずであるため、ユニット数などのパラメータを変更することにより、効率はよくないとしても最適化が進められることを示すことは機械学習の観点からすれば大切な研究であろう。 現実的な系への適用において最大の障壁は自由度の3乗に比例する計算コストがかかるヤコビアンの評価である。近年、ヤコビアンの計算コストを抑えるいくつかの手法が提案されており、自由度の1乗に比例する計算コストで実際の計算が可能であるとの提案もある。こうしたアイデアを取り入れて、より大きな自由度での計算を可能にする手法の開発を目指したい。
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Research Products
(31 results)
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[Journal Article] Signatures of the vortical quark-gluon plasma in hadron yields2020
Author(s)
Hidetoshi Taya, Aaron Park, Sungtae Cho, Philipp Gubler, Koichi Hattori, Juhee Hong, Xu-Guang Huang, Su Houng Lee, Akihiko Monnai, Akira Ohnishi, Makoto Oka, Di-Lun Yang (ExHIC-P Collaboration)
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Journal Title
Phys. Rev. C
Volume: 102
Pages: 021901(R)(1-6)
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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